そんな訳で幽霊である風丸一郎太と出会うことが出来た。他愛の無い話をしていると、本当に初対面なのかと疑うほどに打ちとけ合うことができた。俺の馬鹿らしい話もちゃんと聞いてくれ、たまにツッコミを入れてくれる。そんな絶妙なバランスがとても心地よかった。

「でさ…あ、今何時だ?」
「いや、わからない。この教室の時計壊れているんだ」

周りを見渡すと、3時半ぐらいを指している時計を見つけた。確かに壊れているみたいだ。俺は時間を確認するため、隣である自分のクラスへ行った。
暗闇の中、目を凝らして見ると6時を指していた。

「やっべ…!」

すでに下校時間から30分も経過していた。時間が過ぎるのが早く感じたのは、やはり風丸と話していたからなのだろうか。ともかく俺は風丸の元へ駆け寄った。

「ごめん!俺帰らなきゃ」
「そっか…親御さん、心配してるもんな」

そう言いながらも風丸は寂しそうな表情をして俯いた。俺は風丸をこの教室に残して帰りたくなかった。このままずっと時間が止まって欲しい気もしたが、そんな魔法が起きるわけもなく。

「明日も来るから」

だから、そんな寂しそうな顔をするな。男であるのに女性らしい顔つきは、あまりにも魅惑的で、そのせいでそのような顔をすると、同性同士なのにどきりとしてしまう。風丸は顔を上げて、懇願するように言った。

「…本当か?」

俺は深く、強く頷いた。
風丸はやわらかい笑顔を浮かべて、小さく頷いた。
それを見て俺は下に置いてあったカバンを肩にかけた。この教室を去ろうとした、その時。

「待ってくれ、円堂」

背中から聞こえたか細い声。俺は思わず振り返った。
風丸は胸で手を固く握っていた。真剣な表情をしていた。

「成仏の、手伝いを、お前にしてほしい」
「成仏の…手伝い?」
「学校生活の話を話してくれるだけでいい。もう…ここに縛られるのは嫌なんだ」

風丸は俯いた。
そうだ、風丸は6年間もの長い時間、この教室に居るんだ。窓からサッカー部の練習風景を見るぐらいしかできなくて、ただただここに縛られているだけ。そんなんじゃ成仏も何もできないだろう。きっと多分、今までで風丸が見えて、話すことができたのは俺だけだ。俺が、手伝うべきなんだ。

「…もちろん、いいぜ!」
「……!あ、ありがとう!!」

花が咲くようにぱあっと笑顔になると俺も自然と笑顔になった。
風丸が嬉しいと俺も嬉しい。そんな規則性を見つけた瞬間だった。

俺は一人で夜道を帰っていった。
でも心は躍っていて、たまらなく明日が楽しみになった。


俺は幽霊の成仏の手伝いをすることになった。


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