「少しは後ろめたい気持ちとかないのかよ!」
「後ろめたいも何もサークルの集まりなんだ!しょうがないだろ!?」
「だからって女と居てデレデレしてていいのかよ!」
「し、してない!」


激しい口論をしている俺といち兄。
きっかけは何か。それは昨夜の俺による電話だ。



プルルル…

(出ないなあ…)

ガチャッ

『あっ!もしもし、いち兄!?』
『守?どうしたんだ?』


ノイズ混じりのいち兄の声を聞き、ほっと胸をなで下ろした。


『あのさ、明日のことなんだけど…』
『ねえ〜風丸くん、誰と話してるの?』


突如、女性の甘ったるい声が聞こえた。恐らく背後から話しかけられてるのだろう。


『…女といんの?』
『え、あ…まあ…』


煮え切らない態度に俺は苛立ちを見せた。サッカーのサークルとは言え、マネージャーは居るしきっと女子が大半だと思う。しかし、その時は思考がそこまで回らなかったのだ。


『…で、何?』


言い訳すらしないいち兄に堪忍袋の緒が切れそうになったら必死に抑え、俺は『何でもない』と言って一方的に電話を切った。



これが昨夜の出来事。そして今日、俺はいち兄のマンションに怒鳴り込むや否や『いち兄の浮気者!』と罵声を浴びさせ、今に至る。


はっきり言って俺が悪い。そのくらいわかる。だっていち兄はサークルの集まりに参加しただけで、浮気なんてしてないのだから。
でも、口は止まらない。


「大体何だよ!お前いっつも俺のこと好きとか言わねえし!本当に俺のこと好きなのか!?」
「そ、それは…い、言うのが恥ずかしいから…」
「そんなこと言って、本当は好きじゃないんじゃないか?キスもしてくれないし!」
「う………あう…」


言い過ぎた、と思った時にはいち兄は俯いて顔は見えなかったが、身体が震えていた。


「あ、ごめ…」


ん、と言う前に俺はいち兄に腕を引かれ、驚いて声が出なかった。
気付いた時には唇に柔らかいものが触れていて、


(……え)


いち兄は俺から離れると、照れながらも


「守、好きだよ。大好き。…あい、してる」


そう言った。


「…な、ななななななあっ!?」


顔が熱い。汗がぶわっと噴き出した。今、やっと何があったのか理解をした。


「こ、これでいいだろ」


目線を逸らしながらぶっきらぼうにいち兄は言った。俺は恥ずかしさに耐えきれず、ついに逃げ出してしまった。


「ちょ、守ー!?」


背後からいち兄の声が聞こえたが、構わずマンションの階段を一気に駆け降りた。


「くっそー!いち兄なんて大好きだー!」





翌日、無事仲直りしました。



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番外編です!守といち兄も時には喧嘩したりいち兄が攻める時もあると思います。


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