「…まだかなー」


待ちぼうけをくらってから約12分経った。未だに店内を物色しているであろう抹茶ソフトを、外で待っている。寝不足なので、瞼が石のように重い。

何故寝不足なのか、それは昨夜…いや、今日の午前2時に遡る。





『いち兄!寝れない!』
『…は?』


快眠中だった脳の味噌は、寝起きだったのでそのくらいしか命令出来ず、何が起こってるか分析すら出来なかった。


『…守、今何時だかわかるか?』


俺は極力優しい声で問いただした。優しく、優しく。


『午前2時だな!』


ぷちん。堪忍袋の緒が切れた音がしたが、夜中なので怒鳴る訳にもいかない。


『…普通2時に電話かけるか…?』
『で、でもこんな夜中に電話出来る人、いち兄しかいないし』


それは信用されているってことなのだろうか。少しだけ口元が緩む。


『…はあ、何をすれば良いんだ?』
『んー、もうしてもらったよ!』
『は?』
『声、聞けただけでもじゅーぶん!じゃ!』
『あっ、おい待て』

プツッ
プーップーップーッ…

携帯電話から機械音しか聞こえなくなり、俺は電源ボタンを押した。その後また夢の世界に落ちた。





それにしても夜中なのに騒がしい奴だった。あいつの声は聞き飽きる程耳に入れているが、声の高さ以外、全く変わらない。


「えー!それよりもこっちが良いと思うぜ!」


そうそう、こんなお日様みたいな明るい声………………


「え"!!??!」


さっきまであんなに重かった瞼が嘘のように軽くなり、覚醒した。
俯かせていた頭を上げれば、思い浮かべていた彼がいた。人混みの中でも映えるオレンジ色のバンダナ。


「ま、守!?」


少し遠くて顔はよく見えないが、確かに守だ。見たところ買い物らしい。
声を掛けようと足を前に動かすと


「円堂くん、それじゃあ予算オーバーよ」


その瞬間身体が硬直した。よく見ると隣に可愛らしい同い年であろう女子が居た。


(…デート?)


ずきり。胸が謎の痛みに襲われた。

まさか、あの超鈍感で女っ気0の守が?疑問が次から次へと湧き出てきた。
しかし、客観的に見ればごくごく普通のカップルだ。仲良さげに話している。また痛みがじわりと広がった。


「…何してるの」


突然の声に身体をびくりと揺らし、勢い良く振り返った。


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