「あー楽しかった!」

左右に家がそびえ立つ道で
一人、そう呟いた。

夕日が傾いていて空はオレンジ色だ。
俺のバンダナと同じ色でまたご機嫌になる。

しばらく歩いていると
前方に青空の色がゆらゆらと揺れていた。
俺は持っていたサッカーボールを抱えて走り出した。

「いち兄!!」

呼べば、くるりと振り向いて、優しく笑ってくれる。

「守。またサッカーしに行ってたのか?」
「おう!」

にかっと笑うとまたいち兄は微笑んで「本当に好きなんだな」と言った。

「せっかくだから一緒に帰るか」
「うん!」

俺はサッカーボールを抱えたままいち兄の隣で歩き出した。

最近、会えなかったから少し心臓の鼓動が速まった。
いち兄は陸上とサッカーで悩んだが、俺がサッカーやってるから、とかそんな理由でサッカー部に入った。
共通の話題が持てて嬉しい反面、練習は毎日遅いからこんな偶然じゃないと会えないし
休日は試合ばっかりで会う時間が前よりも少なくなった。
去年は悲しくて寂しくて仕方無かったけど、一年も経てば慣れた。

「はー…守、大きくなったな」
「おう!いつかいち兄を抜かすぜ!」
「馬鹿、俺も伸びるっての」

頭をグーでコツンと叩かれた。
いち兄を横目で見るとやっぱりまだまだ背丈に差があった。

「…そんなに伸びてるようには見えないけど」

悔しくてそんなことを言ってしまった。

「いやいや、よく見ろよ。
一年前ぶかぶかだったのに
ちょっとキツくなってんだよ」

そう言っていち兄は学ランの袖をちらつかせた。

確かに一年前はぶかぶかで手のほとんどは隠れていたのに
今じゃ少し小さいくらいだ。

「ほんとだ。
…じゃあ俺もちょっとはぴったりになったかな?」

一年前、「俺も着たい!」と言って学ランを着させて貰った。
まあ結果は手が完全に隠れるくらいぶかぶかでちょっと悲しかったけど。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -