「…なに、どうした?」

心配になって身体ごと方向転換しようとした。が、がっちり掴まれていて出来ない。

「………ないでよ」
「え?」

消えそうな声に耳を傾けた。
すると、守は顔をガバッと上げた。
俺はその顔にびっくりする。

涙をたっぷり目に浮かべて、
歯を食いしばっていた。

しかし、緊張の糸が切れたように、一気に表情が崩れ、涙も一粒、二粒と流れていった。


「そ、卒業しないでよいち兄ぃぃ」


守は赤ちゃんのような泣き声を上げ始めた。

「ま、守…」

胸がキュンっと鳴った。
可愛い。可愛すぎるだろう。
俺はすぐに守の目線に合わせてしゃがみ、頭をわしわしと撫でた。

「守、家が近いんだからさ、いつでも会えるじゃないか」
「でっで、も、ちゅうがくっせいになる、と、いそがしくっなるって、」

「だからっ会えないっ、て、」としゃくり声を上げながら一つ一つ言葉を紡いだ。
「そんなことないよ」と言ってまた頭を撫でた。

「……、ほんと?」
「うん。ほんと。まじで」
「………えへへ」

守はお日様のような笑顔を咲かせた。ちくしょう、可愛いな。

「ったく…もう小3で男の子なんだから泣くなよ!」
「うーい…。わかった」

頬を膨らませて反感のにおいを漂わせたが、素直に聞き入れてくれた。

じゃあ帰ろうか、と言おうとすると、一足先に守が「あ!」と思い出したように言った。
俺は首を傾げた。

「俺ね!いち兄に卒業する前に言いたいことがあったんだ!」
「…もう卒業してるぞ」

唇をひきつらせると、守は「細かいことは気にしない!」と大ざっぱなことを言った。こいつO型だっけ。

「あのな、あのな、」

いつもとは違う指を弄る守に、疑問を感じた。恥ずかしがっている。…何だろう。

俺が待ち続けていると
守は意を決したように背筋をぴん、と伸ばした。


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