駅を後もう少し過ぎると俺の地元、稲妻町に着く。俺の心は不安でいっぱいだった。

ガタン、ゴトン

規則的な音を鳴らしながら電車は揺れる。しかし俺の身体は緊張はガチガチで、揺れることもなく直立不動だった。





「…稲妻町ー、稲妻町ー、お出口は左側です…」


アナウンスが入り、重々しいドアが開いた。俺は懐かしい駅に降り立った。


「…ただいま、地元」


誰にも聞こえないような、そんな小さな声で呟いた。





「あらー!風丸くんじゃない!お久しぶりね!」
「こんにちは、おばさん」


守の家までの道を歩いていると、ちょうど守のお母さんに会った。あまり変わらない姿に心がほっこりとする。


「帰ってきたの?」
「はい。あ、今日だけですけど…」
「あらあ…残念ね」
「あの、守、どこに居るか知ってますか?」


おばさんは考え込むような仕草をした後、「今日は部活が無いから…遊びに行っているかしら?」と言った。「ありがとうございます」と手短にお礼を済ませ、走り出した。
もう、目的地は決まってる。



長い階段を一段ずつ、慎重に登る。頭上から重い音が聞こえた。
見なくてもわかる。タイヤを手で受け止めている、その際の音。


(やっぱり)


階段を登りきれば、オレンジ色のバンダナを巻いた少年の背中が見えた。
俺はその少年の名前を呼ぶ。


「守!」


俺が名前を呼ぶと、勢いよく振り返り、信じられないものを見たような表情を浮かべた。


「いち兄…」


その瞬間守の頭にタイヤがぶつかった。


(…こういうのは変わんねえな…)





「ごめん、いち兄…」


俺は守を抱き起こし、ベンチまで運んで寝かした。「慣れた」と言って苦笑した。


「…よくわかったね、いち兄」
「お前が居る所なんて、わかるさ」


そう言うと、守は嬉しいような、悲しいような、そんな表情を浮かべた。


「…何で、帰ってきたんだ?」
「守に会いたかった」
「え、」


守は目を見開き、身体を起こした。俺はそっと肩を押し、また寝かした。


「伝えたいことが、ある」
「…なに?」



「今更ごめん。俺、守が好きだ」



世界が2人だけのような感覚に陥った。守の肩が小刻みに揺れ始めた。


「…ほん、とに?」
「ああ」
「…俺で、いいのか?」
「お前がいいんだ」


次の瞬間、俺は守の腕に包まれていた。


「いち兄、好き、大好き、愛してる」
「俺も」
「夢じゃ、ないよな」
「うん」


ゆっくりと離れ、静かに向き合った。初めて気付いた。守はとても綺麗な涙を流していた。





「ずっと、前から好きです」


守はふわりと、笑った。




「俺も、好きです」



つられて、俺も笑った。


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