カチッ

時計の針は6時を指し示した。もう既にチャイムが鳴っても良い時間だが、まだ鳴っていない。
このチャイムが鳴るのを待つのは何日目だろうか。



あの日から守の姿を見ていない。



ピンポーン


「来たっ!」


俺はすぐさま玄関へ駆け出した。ドアを勢い良く開ける。


「よっ!」


目の前には、ピンク色の髪をした褐色の肌の男が居た。


「…なんだ…綱海かよ…」
「な、なんだってなんだよ!」



「おっじゃましまーす」


陽気な声と共に部屋に上がり込んできた彼は、綱海条介。一個年上である。
大学のサークルで出会った。初対面から気さくで、『敬語なんつーそんな堅苦しい言葉は使うな!呼び捨てでいいぜ』とか言ったのを覚えている。
その気さくな性格とサッカーという共通の趣味によって、仲が良くなった。今では頼れる兄貴分だ。


今日は、急に綱海が『風丸の家で酒飲みてーな!』と言い出したため、急遽飲み会が計画された。といっても2人だけだが。
早速酒と夕食の準備をし、乾杯を交わした。


「ぷはー!うんめー!」
「はは、お前はいつも元気だな」


そう俺が言うと、綱海は眉間に皺を寄せた。


「今日さ、飲み会しよっつったのは飲みたいだけじゃねえんだよ」
「は?」
「風丸が元気なさそーだからよ、元気付けにだよ」
「……!」


見抜かれていたことに驚いた。鈍感そうに見えて鋭いのがこの男だ。いや、もしかしたら俺がわかりやすいのかもしれない。


「悩みがあるなら話してみろよ、解決するかもしれねえぜ?」


優しく目を細めて笑う綱海を見て、どうしようも無く泣きそうになった。彼なら、助けてくれるのではないか。そう思い、俺は今までのことを全て話した。


「はー、なるほどね…。しかし、話を聞いた上だとお前はその幼なじみが好きとしか思えねえぞ?」
「…そうか?」
「ああ。…何で告白断っちまったんだ?」
「…あいつには、もっと相応しい奴がいる」
「そんなんお前が決めることじゃねえ」


はっきりと言い渡した彼の方を向き直ると、息をのんだ。真剣な顔だった。


「お前はその幼なじみが好き。そいつはお前が好き。なら良いじゃねえか」
「で、でも…」
「いいか、時間は今しかねえんだ。だから迷ってたら…他の奴に取られちまうぜ」


綱海は俺の背中を勢いよく叩いた。


「行けよ、そいつん所。んで、お前の気持ち伝えてこい」


俺は力強く頷いた。


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