「こちら緑川!標的は未だに動きを見せません!」
「…何だそれ」
「いや、無線的な」


緑川は完全に今の状況を楽しんでいた。そういう所だけは羨ましいと感じる。俺はというと、どうにも出来ない不安で心が破裂しそうだった。

数メートル先に守と見知らぬ女子が居る。会話は聞こえないが、楽しそうに話していることは窺えた。


「2人はカップルなのかなあ?」
「うっ」
「あっごめん地雷だった?」


俺は眉をひそめて緑川を睨んだ。くそ緑川め。


「あっ動き出しました!」


いつまでごっこを続けるつもりなのかわからない緑川が叫んだ。


「えっ!?」
「行きますよ、閣下!」
「なんで俺閣下なんだよ」


眉をひそめながら立ち上がり、緑川についていった。





「んーどこに向かってるんだろうね?」
「知らねーよ…」


現在、カラフルな店に挟まれた道を歩く2人の少し後ろを、物に隠れながらついて行っている。端から見れば怪しいだろう…。

その時、まあ予期していたけど、まさか本当に起きるとは思わなかった出来事が起こった。


「ちょ、風丸、押さないで」
「押してない」
「押してるだ」


ろ、と言う前に緑川の身体のバランスが崩れた。必然的に前にあったごみ箱に当たる。
その瞬間、また必然的に大きい音を発した。


ガタガタガタッとごみ箱と連なって俺たちは倒れ込んだ。


当然周りの視線も集まる。無論、"彼"も例外ではない。
目が、合った。


「…いち兄?」
「…………………………やあ」





「「買い、出し?」」
「そう、サッカー部の!あ、こっちは木野秋、サッカー部のマネージャー」
「初めまして、木野秋です。いつもお世話になっています」


なんだ、彼女とかじゃないのか…。何故か安堵する。
見たところとても可愛らしく、清楚な少女だ。話し方だけで上品さが伝わってきた。


「いち兄、その人は友達か?」
「あ、俺緑川リュウジ!その通り友達!」


お互い自己紹介を済ませ、尾行したことを謝った。何故か凄い嬉しそうにしてたが、許してくれたことに安心した。

その後、守は木野さんを送って行くことになり、俺は緑川と共に帰った。


「あー疲れた…」
「…なあ、風丸。1つ、質問いいか?」
「ん、何だよ」


神妙な面持ちなので、思わず身構えた。


「お前、あの幼なじみのこと、好きなの?」





「…はっ!?」
「だって超気になってたし」
「そ、それは…」
「幼なじみだから?」


俺は言葉につまった。


「多分木野さん、あの幼なじみのこと好きなんじゃないかな」
「…え」


気がつかなかった。自分がそんなにも鈍感だとは思わなかった。


「あ、もう家に着いたね」
「…あ、そうだな」


気付かぬ内に緑川の家に着いていた。そのまま門をくぐるのかと思いきや、ぱっと振り返って口を開いた。


「風丸、あの幼なじみのこと好き?」
「え?」
「あの木野さんって人にとられたらどう思う?」
「それは…」


質問攻めされ、何も言えなくなってしまった。俺は俯き、自分の影を見つめた。


「…なあ、知ってる?『灯台下暗し』」
「…は?」


言葉の意味が理解出来ずにまた聞き返した。


「『灯台下暗し』の意味、知ってる?」
「…身近にあるものはかえってわかりにくい」
「正解。そういうことだよ」


意味不明の言葉を残したまま、緑川はさっさと家に入ってしまった。



緑川の言葉がいつまでも、頭の中で反響した。



‐‐‐‐‐‐‐‐
緑川が何か頭良さげで鋭い…。なんかgdgdで申し訳ないです。


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