「い…今なんて言ったんだ?」

と言いつつ、霧野がなんて言ったかはちゃんと聞こえていた。それでも聞き返せずにはいられなかった。
今、霧野はオレに告白した。

「好きだ、神童のことが。友達としてじゃない、好き」

今度ははっきり「好き」といった霧野。どこか顔が桃色に染まっている。霧野の髪の毛と同じような色だ。
ああ、そうか。あのとき、逃げ出したのも霧野がオレのこと好きなのを気づいていると勘違いして、「男同士なのに」って嫌われると思って、だから逃げ出したのか。どうしてすぐに、気がつくことができなかったのだろう。だからさっき霧野も、オレが鈍いとつぶやいたのか。
でもやっと気づけた。でも、オレはまだ自分の気持ちがわからないままだ。霧野も、気まずい顔でオレの返事を待っている。どうすればいいのだろう。

「…いいよ、まだ返事しなくて」
「えっ?」
「迷ってるんだろ?だったらいいよ。いつか返事、聞かせてくれれば」

そう言うと霧野はやわらかい笑みを浮かべた。とても優しい顔にオレは泣きそうになった。一番辛いのは霧野のほうなのに…。オレは泣きそうな顔を俯かせた。すると霧野は「帰ろう」といつもの声色で言った。まだオレは、何も言えてないのに。

「…待ってくれ!」

一度歩き出した霧野は立ち止まって、不思議そうな顔で振り向いた。どうした?と心配そうに言う。
なあ霧野、どうしてオレは霧野に彼女ができることがこんなにも辛くて悲しいんだろうな。友達なら当たり前なのかもしれない。でもオレにはどうも、…例えば三国先輩に彼女ができたときの辛さや哀しさとは違うと思う。どちらかというと三国先輩のときはきっと「寂しい」と思う。でも霧野に彼女ができたときは、胸が張り裂けそうなくらい…辛い。
これが、好きということなのだろうか。いや、オレにはよくわからない。でもひとつだけ、ほんのひとつだけ。これだけは確かなことがある。

「オレ、ずっと霧野のそばにいたい」

霧野はぽかんと呆けたあと、顔を急激に真っ赤にさせた。オレはなんで霧野がそこまで顔を真っ赤にさせてるのかがわからず、首をかしげた。

「な、なあ神童…それって…プロポーズみたいだけど…」
「え」

そう言われれば確かにプロポーズにも聞こえる言葉で。と認識した途端オレも顔を赤く染めた。もしかしてオレは、とんでもないことを言ってしまったのではないだろうか…。そう思っていると霧野は突然声を上げて笑いだした。

「ありがとな神童。でもそれってオレのこと好きってことなんじゃないか?」
「そう…なのか。はは、自分の気持ちなのにはっきりしないんだな」
「それでいいよ神童は」

そう言いながら霧野はまた笑った。オレもつられて笑う。

「なあ神童。オレお前が大好きだよ。だからオレのそばにいてほしいな」

はにかみながら言った。そう言っている霧野がとても眩しくて、とてもかっこよくて。きっとこれは霧野の背中に隠れているオレンジ色の太陽のせいではないと思う。そしてどこか赤い顔も、きっとこの夕暮れのせいじゃない、

一歩踏み出して、こたえよう。
きっとこれからもオレの隣は霧野で、霧野と隣はオレであることを。

「ああ!」

オレたちはきっとお互い歩みを進め、また距離が近くなっただろう。
さて、ものさしで測ったならば何センチメートルだろうか?


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