「やっぱりここにいた」
「…なんで」

霧野はブランコで今にも泣きそうな顔を俯かせていた。
霧野がいたのは、オレの家の近くにある公園だった。一見ただの公園だけど、オレたちにとっては違う。

「昔、よくここで遊んだよな。そういえばオレが泣いたときに隠れてたのも、ここだったっけ」
「…よく覚えてんじゃん」
「霧野もな」

そう、ここはオレたちにとって思い出の場所。仲良くなった小学生のときに、よくここで遊んでいた。ブランコで遊んだり、砂場で遊んだり。
そしてオレが泣いたときに駆け込んだのもここだった。よくこの公園の隅に隠れて、誰にも見えないように泣いていた。

「でもお前はいつも見つけてくれたよな。そしてオレの手を握ってあやしてくれたっけ?」
「ちょ、昔の話だろ!!」

そう言って霧野は珍しく顔を真っ赤にして叫んだ。オレは思わず笑みをもらした。そんなオレを霧野は睨んで、明後日の方向を向いてしまった。

「なあ霧野、なんで逃げたんだ?」
「…嫌われたと、思って。何か言われるのが怖かったから、逃げた」

ぽつりぽつりと、呟くように言った。いつもの威勢の良い声とは大違いだ。オレは霧野の言ってることがわからなくて、首を傾げながら「どういうことだ?」と言った。

「え…だって…オレの気持ちわかっただろ?気持ち悪くないのか?」
「なんのことだ?」

オレがそういうと、霧野は口をぽかんと開けたまま何も言わずにいると、急に顔に真っ赤にした。

「ごめん!なんでもない!忘れてくれ!」
「えっ、ど、どういうことなんだよ?」
「なんでもないっつーの!」

霧野はブランコに乗ったまま、「そうだったな…お前は鈍いもんな…」とか細い声で言った。オレって鈍いのだろうか…。

「まあ…霧野。もう帰ろう」
「…うん」

霧野の返事を聞いてからオレは帰ろうと踵を返す。すると、左手が強い力で後ろに引っ張られた。振り返ると、霧野は真剣な顔でオレの左手を握っていた。オレは顔が熱くなるのがわかって「ど、どうしたんだよ」と焦りながら聞いた。

「…あっ、ごめん」

霧野は慌てて手を離した。霧野に握られた場所が、火傷をしたように熱を帯びていた。思わず右手を覆いかぶせる。

「…オレ、やっぱり言わなきゃいけないと思うんだ。こんな気持ち、お前に抱くのは変だと思った。嫌われると思った。でももう、普通の友達には戻れないんだ。だからオレは、」
「きり、の…?」

どくん、どくん。心臓がうるさい。
霧野は緊張した面持ちで深呼吸して、

「好きだ」

たった三文字の言葉に、力を込めた。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -