オレたちの距離をものさしで測ったら何メートルだろうか。いや、単位はセンチメートルだろう。そのくらい、オレたちの距離は近かったのかもしれない。



「神童くん!」

振り返ると一人の女子が居た。…いや、二人だ。一人が顔を赤くしてもう一人の女子を壁にして隠れている。「ほら、」と壁になっているポニーテールの女子が隠れているロングヘアの女子を諭すように言った。ロングヘアの女子はもじもじしながら姿を現すと、白い封筒をオレの目の前に突き出した。

「ああああのっ!これっ!その…霧野くんに…渡してくれませんか…?」

恥じらいで顔をりんごのように染めながらそんなことを言った。
たまにあることだ、ラブレターを代わりに渡してくれと頼まれるのは。もちろん相手はオレの親友であり、心の支えでもある霧野蘭丸。男なのに長い髪をおさげにしている。その上女子のような端正な顔つき。まるで人形のようだ。男らしいというより中性的。これもいわゆるイケメンというやつで、女子から密かに人気があるのを知っている。

「ああ、わかった。渡しておくよ」

オレは愛想笑いでそれを受け取った。



「神童!」

さっきとは違う声、でも声だけでわかってしまう。この声は、

「霧野」

ピンク色のおさげを揺らしながら駆け寄ってくる。「どうした?」と聞くと「別に」と言う。いつものやり取りだ。ふと、さっきの白い封筒が頭をよぎる。本当は渡すのは少し嫌だが、親友としては当然だ。オレは制服のポケットからちょっとよれてしまったラブレターなるものを霧野に渡した。

「…え、なにこれ」
「ラブレター。女子からお前に」
「…ああ、ね」

一瞬眉尻を下げた蘭丸は、何か良いことをひらめいたのかにやりとすると、「嫉妬、する?」と言った。

「…は?」
「だからー、オレに嫉妬する?」
「…誰が」
「神童が」

オレは言葉につまったが、目をそらして「するわけないだろ」と言うと、残念そうな声色で「えーっ」と愚痴をもらした。

「あ、ねえねえ」
「なんだよ」
「もしさー、オレたちが付き合ったらどうなるかな?」
「はあ!?」
「もしもだって」

オレと霧野が付き合ったら…?
手をつないだり?
あーんし合ったり?
デートしたり?
キスしたり?
そ、それ以上のこ「神童!それ以上は考えるな!」

霧野の声で現実に引き戻された。危ないところだった…。オレはひとつ咳払いをした。

「と、とにかく、オレたちが付き合ってもなにも変わらないだろ。隣同士がいちばん自然だからな、今まで通り隣にいるだけだろ」
「神童…それ、キザっぽい」
「なっなんだと!」

「冗談だよーん」と言いながら霧野は逃げるように走り去った。

「ったく…」

そういえば、あいつ、告白の返事どうするんだろ。


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