誕生日というものは、特別なものだ。
自分が生まれた日というのもあるし、歳をひとつとるという日でもある。
誕生日というものは、楽しいものだ。
大抵の人は親や友人から祝ってもらえるし、プレゼントも貰える。だから誕生日が嫌いな人は世の中にそういない。
しかし、誕生日の意味の受け取り方によって、心の心境は大分変わる。
ひとつ歳をとる。これが誕生日の意味のひとつでもある。
そのひとつ歳をとることを「ひとつ大人になった」か「ひとつ老いた」かによって心境は大分変わると思う。
歳をとることを待ち遠しい人もいるし、誕生日は嬉しいけど歳をとりたくない人もいる。
俺はどちらかというと、後者だ。だって、歳をとれば残りの人生がじわじわと減っていくんだぜ?それが目に見えてわかるんだぜ?
それが嫌で、誕生日を迎えることが何となく複雑になった。

そんなことを向かいに座る恋人に言ったら

「風丸はおじいちゃんかよ」

と笑われてしまった。真剣に語ったのでちょっとムカッときた。眉間に皺を寄せると、円堂は苦笑した。

「風丸は深く考え過ぎなんだよ。それより、誕生日プレゼント何がいい?」
話を逸らされて俺は更に不機嫌になった。冗談混じりで「お前の人生」と言ったら、円堂は笑いながら

「高いぜ?」

そう言った。
これが一週間前の出来事。そして今日、俺の誕生日。
クラスメートや部活のみんな、陸上部の後輩、様々な人から祝いの言葉をもらった。しかし、肝心のあいつからは未だにもらっていない。あっという間に放課後になり、部活動も終わって俺は円堂と帰宅を共にした。
他愛も無い話がしばらく続いたが、突如円堂は黙り込んでしまった。

「円堂?」

呼びかけると、円堂は夕日を背にして俺と向かい合った。夕日が眩しくて目を細めた。
円堂は肩から提げていた鞄の中を弄り、綺麗に包装された袋を取り出した。そしてそれを俺に突きつけた。

「誕生日プレゼント!」

にかっと笑う円堂に礼を言いながら受け取った。「開けていいか?」そう言おうと思って顔を上げると、円堂は真剣な顔つきで佇んでいた。俺は思わず息を呑んだ。
円堂の顔は少しだけ、赤に染まっていた。それは夕日のせいなのか、それとも、

「もうひとつ、誕生日プレゼント、あるんだ」

ひとつひとつ、落とさないように言葉を紡いだ。俺は返事の代わりに首を傾げた。円堂はすうっと思い切り息を吸った。

「俺の残りの人生、やるよ!」
「……………は?」

思わずもれた声。だってそんなこと言うなんて思わなくて、寝耳に水というか。

「なんで、」
「…この前欲しいって言ったから」

あれ冗談だったのに。円堂は何でも本気にする。俺は頭を抱えた。

「それ、プロポーズ?」
「…そう受け取っても、いいぜ」

正直言って歳をとるのは嫌いだ。人生がだんだんすり減っていくようで。でも、円堂と共に歳をとっていけるのであれば、それは嫌なことではない。そう思った。

「…ありがたく、受け取るよ」

プレゼントの中身はシンプルなシルバーリングだった。



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相互記念小説でした。
なおさんのみお持ち帰り可!


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