「そういえば」

食事中、突然鬼道から
話を切り出された。

「なんだ?」
「お前らは幼なじみなんだろう?
名前で呼び合ったりしないのか」

お前らとは
きっと俺と風丸を指して言っているのだろう。
この席で幼なじみなのは
俺たちだけだ。

「円堂は名字より名前のほうが
字数も少ないし呼びやすいだろう。
まあ風丸は名前が長いが…
あだ名とか」

あだ名という言葉に
風丸がピクリ、と
体を揺らして反応した。

「あー…、鬼道。
その話はちょっと、な」
「?何かあったのか?」
「まあ、昔な…」

俺は言葉を濁した。

「言いたくないなら言わなくていいが
気にはなるな」

豪炎寺は本日の夕食、
焼き魚を一口食べると
そう言った。

「まあ昔のことだし
別に話してもいいぜ」

風丸は少し吹っ切れたような表情で
そう言ってくれたので
俺は鬼道と豪炎寺に
過去にあったことを話し始めた。





数年前―

いっちゃん。
俺は風丸のことを
一時期そう呼んでいた。
理由は名前が長かったためと
見た目が可愛らしいからだ。

ある日、こう言われた。

『その呼び名、やめてくれ』
『え、なんで?』

幼い俺は理由も考えず
幼い風丸に聞き返した。

『だって、見た目も女っぽいのに
あだ名も女っぽいな
って男子にばかにされるんだ』

風丸はしゅん、と花が枯れたようにうなだれた。

『なんだと!
その男子ぶっ飛ばしてやるよ!』
『だめだよ、そんなの…』

風丸は泣きそうな顔で顔を横に振った。

『ぼく…ううん、
俺、今日から男らしくする。
まもるくんじゃなくて円堂って呼ぶ。
だから円堂も俺のこと
風丸って呼べよ』

びしっと人差し指を突き出して
俺に宣言した。

『えー!なんでー?!』
『いいから!
呼ばないと…絶交!』

風丸は手をぐっと握って
声高く言った。

『わ、わかったよー…』

俺は風丸の必死な様子に圧され、
仕方なく呼び名を変えた。

(可愛かったのに)

翌日から呼び名が変わり、
大分話し方が男っぽくなったため
男子からあまり馬鹿にされなくなった
と喜んで俺に話した。


bkm

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -