帰り道。
多分円堂はこの後渡す予定だろう。
期待と緊張が入り混じって汗が噴き出る。

しかし、他愛も無い会話が続くだけで
何の変化も無かった。

ついに、自宅前まで来てしまう。

いつもは門の前で向き合って
どちらかからはわからないが、
「また明日」って言う。
だが、今日は沈黙だけが流れている。

「…………………」
「………………………」

嫌な、気まずい沈黙ではない。
くすぐったいような沈黙だった。
だが、それも耐えきれずに口を開こうとすると
俺よりも少し早く円堂が口を開いた。

「その、渡すチャンスが見つからなくて、
ごめん。遅れた」

たどたどしく言うと
ポケットから小さな箱を取り出し
俺に差し出した。
いつでも出せるようにポケットに入れといたのだろうか。
ちょっとリボンがしなってる。
素直に愛しさを感じ、微笑みながら受け取った。
「開けて、いいか?」

円堂はゆっくりと頷いた。
それを見て丁寧に包装を開ける。

このサイズだと指輪だろうが、
円堂がそんなキザったくて
こそばゆい物を買ってくるだろうか。
何かな何かなと期待すると

「………………えっ」

まあなんと、指輪だった。

「何買っていいかわかんなくて、
雑誌とか読んだらペアリングとかがいいって…」
「…で、買ったのか?ペアリング」

円堂は上気させた顔を下に動かした。
と、いうことは同じものを円堂も持っているということなのだろうか。

「は、恥ずかしかったんだぞ。買うの」

湯気が出そうなくらい耳まで真っ赤だ。
確かにアクセサリーショップにいる円堂を思い浮かべただけで
笑いがこみ上げてきた。

「…わ、笑いたきゃ笑えよ」
「すまん。ぷっ…くく………」
「わ、笑うなよ!」
「い、言ってることが矛盾してるぞ…ぷぷ」

必死に笑いをかみ殺した。
これ以上笑うとかわいそうなので
大きく深呼吸をして心を落ち着かせた。

「…ありがとう円堂。
これ、大事にする」

俺はありったけの笑顔を円堂に見せた。

「……!…おう!」

円堂もありったけの笑顔を
俺に見せた。


bkm

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