シャーペンが走る音と
時計の秒針がカチカチとなる音だけが聞こえるのは
実に珍しいことだ。
今まで円堂の部屋で
一緒に宿題や勉強をしたことは
たくさんあるが
「飽きた」とか
「サッカーやりたい」とか
開始1分で円堂が喚き出すので
すぐに部屋は騒がしくなる。

だからこの現状は
とても喜ばしいことだ。
もう10分は経っているが、
円堂の口から弱音が吐き出されることはない。

俺は止まっていた手を
再び動かした。



すると、何か目線を感じた。
そろそろ飽きてしまったのか?
と円堂をちら見すると

「…………………」

怖いくらいに黙って
俺の字を見ていた。

「………なんだよ」
「風丸、字上手いよなあ」

は?と疑問の声色を含んで吐き出した。
何故突然そうなる。

「いや、さっきまで自分の字下手だな
とか思って字の練習してた」

(…まさか大人しかったのって)

堪忍袋の緒が切れた音がした。

「お前なあ…
しゅ!く!だ!い!し!ろ!」

俺は大声で、
しかも円堂の耳元で叫んだ。
円堂は条件反射で
ぱっと手で耳を塞いだ。

「な、なんだよ。
そこまで怒ることねーじゃん」
「珍しく大人しいと思ったら…
幻滅した」

そう言って俺はそっぽを向いた。
円堂を困らせるためだ。

「か、風丸ー」
「謝ってる暇があるなら
さっさと宿題終わらせろ」
「あ、あいあいさー!」

円堂は敬礼のポーズをとった後
置きざりだったシャーペンを持って
ノートを上で走らせ始めた。


bkm

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テーマ「人外ファンタジー」
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