「お前が好きなのは俺じゃない。
…昔の俺だろ?」
声が震えている。
俯いていて表情がよくわからない。
「んな、こと………」
「あるよ。
お前は俺を見ていない。
俺の中にある昔の俺を見ているんだ」
ハッと気付いた。
「思い当たる節でもあるんだな」
風丸はフッと悲しそうに笑うと
歩き出した。
「どこ、行くんだ?」
「帰るよ。失恋したみたいだしな」
「ま、まだ何も言ってねーじゃん」
「わかるよ、何となく。
幼なじみ、なんだろ?」
言葉が出なかった。
風丸の背中が見えなくなる。
(俺は好きなのか?)
(友達として?…違う?)
(今の風丸と昔の風丸?)
(違う、そうじゃない)
俺はいつの間にか走り出していた。
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