『一郎太くん、おはよう。
突然だが君に質問をしよう。
自分の名前、年齢を教えてくれるかい?』
妙なことを聞くなあ
と思った。
『…風丸一郎太。15歳です』
『君の両親の名前は?』
『…わからない』
そんなはずはないのに、
何故か思い出せなかった。
母親と名乗る女性の名前も
思い出せない。
『誰か友達の名前とか
わかるかい?』
『…いいえ』
『以前どこに住んでいた?
以前どこの中学に通っていた?』
『………わからない』
俺に残された記憶は
自分のことだけだった。
医者と母が病室を出て行った後
病室の白い天井を眺めながら
自分の中を記憶を模索した。
でも、
もぬけの殻だった。
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