「な…何だよ初めましてって。
冗談はよせよ風丸」
「悪いが、冗談じゃないんだ。
覚えてないんだよ、お前のこと」
風丸は申し訳なさそうに
目を伏せて答えた。
どういうことか、
さっぱりわからなかった。
でも、やっぱり目の前の奴は風丸で
ポニーテールに結われた水色の髪も
オレンジのゴムも
片目が隠れているところも
まつげが長いところも
変わっていなかった。
「風丸…なんだよな」
「ああ。お前は円堂守…だよな?
母から聞いたよ。
今日一日世話になる、よろしく」
「あ、ああ…」
「とりあえず行かないか?
詳しいことは着いてから話すよ」
「…わかった」
俺たちは静かになったホームを
後にした。
移動中も、
俺は風丸と一言も話せなかった。
話すことはたくさん考えていたのに
一つも口にすることは出来なかった。
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