:: 蘭丸+拓人
ドタドタと、騒がしい足音が家中に鳴り響く。その足音はリビングへと向かっているようで、鳴り止まったと思いきや大きな音を立てながらドアが開いた。
「兄さん!!!」
ドアを開けるな否や叫んだのは拓人。この家の次男にあたる少年だ。
「ングッ…な、なに?」
目を見開いて驚きながらも食パンをなおも頬張るのは蘭丸。この家の長男にあたる少年だ。
「なにじゃないよ!なにこのTシャツの染み!」
「あ〜カレーこぼしちゃって」
「それを一晩放置しといたっていうのか…?」
「うん!」
「うんじゃねえーだろ!」と怒声がリビングに響いた。蘭丸は食パンを咥えたまま逃げるように駆け出した。「あっちょ、待ちなよ兄さん!!」
「ったく…拓人あんなことで怒りやがって、ビタミンが足りてないんじゃねえの?」
「それを言うならカルシウムじゃないのか?」
「倉間!」
いつのまにか蘭丸の横には、彼の同級生である倉間がいた。「相変わらず仲良しだな」と倉間は蘭丸に言う。すると蘭丸は眉尻を下げてげんなりとした。
「仲良し〜?どこが。あいつカレーTシャツに零しただけで怒りやがって…」
「それを帰ってきて放り投げるのが悪いんだ。あーいうのって取れにくいんだからな?誰が取ってると思ってるんだ」
「そりゃたく…うわっ!」
蘭丸の後ろには何時の間にか拓人がいて、むすっとした表情で蘭丸を睨みつけていた。
蘭丸は両手を合わせて「ごめん!」と平謝りする。拓人は変わらず怒ったままだ。倉間は二人の様子を見て思った。
(やっぱり仲良しじゃねえか)
きっと二人は否定するだろうけど。
そんな仲良し兄弟の、ある朝。