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:: 円+風

アニズマで風丸離脱前の月夜のシーンで、もしも風丸が弱音を吐き出していたら、何か変わっていたのかな、という話
(セリフは忠実じゃないです)



「神のアクアがあれば」
風丸はそう言った。風丸らしくない、俺はそう思った。風丸はいつだって前向きで、頼ることを嫌っていつだって一人で立ち上がって、支えられるどころか俺を支えてくれて、そういう奴だ。
こんな風丸、俺は知らない。

「そんな物に頼っちゃだめだ!」
「円堂…」
「風丸、頑張ろうぜ!絶対、勝てるからさ!」

風丸は眉尻を下げてひとみを揺らした。不安そうな、顔。風丸は俺の顔をじっと見つめた後、俯いてしまった。どうしたのかと思い、声をかけようとしたら、か細い声で

「俺、頑張ってるよ」

そう言った。え?と俺は思わず聞き返した。いつものような芯の通った声じゃなくて、本当にか細い、今にも消えてしまいそうな声だったから。

「こんなこと言いたくないけど、頑張ってるよ!!」

風丸は勢いよく顔を上げた。俺は息を呑んだ。風丸の目にたまった透明な液体は月に反射してきらきらと光り輝いた。「なんかのセリフであったな。頑張ってると言えるうちは頑張ってない証拠だって。でも俺、頑張ってるよ!!心が擦り切れそうになっても、足が重くて動かなくても、また力入れて、頑張ってるよ!」

風丸はそこまで言うと、ぎゅっと目を瞑った。たまっていた涙がぼとぼとと流れ落ちた。

「円堂が頑張ってるのも知ってる。豪炎寺も、鬼道も、みんな!俺だって頑張ってる!…でも…あいつらに…勝てないんだ…あいつらに…」

最後の方になると尻すぼみになって、聞こえなくなった。「風丸…」かける言葉が無くて、俺は言葉を飲み込んだ。
俺は頑張ってるのに頑張れと言われるのが一番酷なのを知った。試合中に応援の「頑張れ」と言われるのとは全然違う。見えない壁を飛び越えようとしても越えられなくて、越えられなくて、そんな時に「頑張れ」。前者と全然違うことに気付いた。

「ごめん…風丸…」
「謝ることじゃないよ」
「俺、風丸の痛みも背負うから!」

風丸は「え」と目を丸くさせた。その後風丸は慌てふためいて「お前にこれ以上背負わせるわけにはいかねえよ!」と言った。

「だから、風丸も俺の痛み、背負ってくれ」

風丸は目をまた丸くさせた後、今までせき止められていた涙を一気に溢れさせた。

月夜の夜、俺たちは契りを交わした。

 
 
書いてる時思ったけど、もし本音を言っていたら、辛いと言っていたら、離脱することも無かったかもしれない。でも離脱してチームを離れて、二人が絆の強さを感じたのなら、それも悪くなかったのかもしれない。

 
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