大学の先輩Sの証言
ったく、いきなり呼び止められたと思ったらなんだ? アンケートか何かか?
ええ、だいたいそのように認識してくだされば幸いです。
まあこのあとなんもねえからいいけどよ。
それじゃあ始めさせて頂きます。
Q1.この写真の人物をご存知ですか?
ん? ああ、○○(プライバシー保護のため名前は伏せてます)か。知ってるぜ。○○がどうかしたのか?
Q2.この人物とはどのような関係ですか?
関係? んなこと言われてもなあ……。同じ学科の先輩後輩ぐらいしか思いつかねえな。
同学科の方々のお話によりますと、仲がいいそうですね?
そうだな、悪くはないと思ってる。先輩後輩っていう上下関係はあるが、気負いせず話しかけてくるし、異性が苦手な俺でも話せる。一緒にいて楽しいしな。
Q3.そう思えるようなエピソード、できれば最近のでなにかありますか?
うう〜ん……最近ってのならこんなことがあったな。
○
一昨日の話だ。
昼飯に食堂に行ったんだが、見事ピーク時と重なってな、これでもか! ってぐらい混雑してたんだ。
ちょっとずらせばよかったと思ったぜ。
時間改めるにも空腹に我慢できず、結局そん中に突っ込んでいった。
適当に定食頼んでなんとか空いてる席ないかと探してたら見知った顔――っていうよりは姿か、を見つけた。
一番奥のテーブルの一番端で突っ伏しててたんだ。
声をかけてみたが、ぴくりとも動かなくてただならぬものを感じたから何度か呼んでみた。。
なんとか反応してくれたが、いつも元気なあいつとはかけ離れた泣いてるようにも聞こえる声だった。
やっぱりただ事じゃないとトレイを置いて揺さぶると、あの場において一番似つかわしい音が鳴った。
なにかって? あそこは食堂だぞ? 腹の虫が鳴いたんだよ。
「が、餓死する……」
ほっとしたのと同時に脱力したぜ。
とりあえず大事に至らなくてよかったが、拍子抜けもいいところだ。
曰く、いつも弁当作ってくれてる同居人がここ三日ぐらい学校の作業室に篭ってて、最悪なことに財布を忘れちまって無一文だったとか。
空腹に耐え切れず、せめて匂いでもいいから空腹を紛らわそうとしたらしいが、んなもん逆効果に決まってんだろ。
立ち去ろうにもすでに動くエネルギーもなく、幸せな匂いに包まれながら餓死を待ってたらしい。
激ダサだぜ。
そう言ってやろうとしたが、さすがにあんな状態じかゃ言いすぎかと思い直してなにも言わなかった。
それから持ってきた定食やった。
そりゃあ俺だって腹減って死にそうだったけど、アイツのほうが重症だし、放っておけなかったんだよ。
最初こそ死にそうな声で断った。
あいつ妙に律儀なんだよ。
だからたまには先輩立てろってその口に無理やりからあげ突っ込んでやった。
咀嚼して踏ん切りがついたのか、「ごちになりやすっ!!」ってすごい勢いで食べ始めた。
見事な食いっぷりだったぜ。
見てるこっちもお腹が膨れるくらいにな。
そしたら今度は俺がからあげ突っ込まれた。
「おすそわけっす」
○
「うまいもんはわけあったほうがもっとうまいんすよ」だとさ。せっかく先輩らしいところ見せれたのに最後の最後で一本取られたぜ、激ダサだな。と、まあこんな感じか。
それは確かに仲がいいですね。
俺が一方的にそう思ってるだけかもしれねえがな。
まさか。そんなわけないと思いますよ。それではそろそろ最後の質問に移ってもよろしいですか?
ああ。
Q4.彼女のことが好きですか?
ああ、好き――それって友達としてだよな?
何をおっしゃいます。当然ラブの意味です。
――って、なっ!? 確かにあいつのことは好きだけど、それは慕ってくれる可愛い後輩って意味でそれ以上でもそれ以下でもねえよ!!
ふむふむよくわかりました。ご協力ありがとうございました。
あ、ちょっ、なんだよその含みのある顔は!! って、コラ待ちやがれ!!
[ 5/21 ] [prev] [next] [栞を挟む] [back]
|