再会3 side奏


2人が連れてこられたのは大通りから外れた路地裏

いらなくなった看板や木材などであふれかえっており、どこか嫌な雰囲気が漂う

そんな雰囲気を感じ取ったのか、奏は無意識のうちに燐に近づく


「幾ら払えばいいかな?」

「は?」


見事に燐と奏の声が重なった


「え、何、何なの? どういうこと?」


が燐に小声で話しかける


「いや、俺のほうが知りてえよ」


彼の話曰く、先日鳩を殺して楽しんでいたことについて黙っていてほしいようだ

つまり賄賂を渡して口をふさごうとしているわけだ


「何だよう。というかあたし関係ないじゃん」


全くそのとおりである(笑)


「いらねーよ。言わねーし。話し終わりか? じゃー用事あるんで」


用がある燐は早々と退散しようとする

それに続いて奏も帰ろうとした


「ちょっと何ソレ? まさかカッコつけてんの? 素直になんなよ〜。君らまともに進学できないぐらいビンボーっていうじゃん?」


ぴたりと燐の足が止まった


「燐?」

「弟の奥村雪男だってさー必死でがり勉して奨学金で入学したんでしょ? つまり借金じゃん!」


見せ付けるように彼は財布から一万円札を取り出した


「カワイソ〜。学費の足しにすれば?」


そのとき燐が動いた

燐は思いっきり殴り飛ばし、ずしゃあと音を立てて倒れる彼に言った


「……てめぇ俺はどーいってもいーけどな、弟はバカにすんじゃねえ!!!」

「ひゃはは……てーなあ、何調子こいてんだああああっ!?」


血走った眼の鳩殺しは燐の隣にいた奏めがけて突進してきた


奏「え、ちょっ!」


そのまま背後から腕を回され、完全に捕らえられた

手にはいつの間にか折りたたみ式のナイフが握られていた


「奏っ!! 離せっ!! そいつはかんけーねえだろ!」

「っと動くなよ? 動いたらこいつの命はないぜぇ?」

「り、燐……」

「いまだやれ!」


鳩殺しの命に腰ぎんちゃく2人が燐の動きを完全に封じた

鳩殺しは残ったもう一人の腰ぎんちゃくに奏を渡すと、燐が倒されたときに落ちた紙を拾った


「『見習い面接』……? ヒャハハなにコレ。あーだからスーツだったんだ」

「燐を離せ!」

「外野は黙って見てろって。それにしても哀れだよね〜。中学の時は鬼だ悪魔だ言われたやつも卒業しちゃえば職探し……」


まるで赤子をあやすように鳩殺しは燐の頭を優しく叩く


「テメーみたいなヤツは結局後ろ盾がなくなればただの社会の底辺なんだよッッ!」


再び折りたたみナイフをちらつかせる鳩殺し


「燐逃げて!」


何とか燐を助けようともがくも所詮女子の力で男子の力を超えることはできなかった

結局奏は何も出来ないまま見ているしかなかった


「ギャアハハハハハハハ!!」


鳩殺しが燐の額にナイフを入れたとき、それは何の前触れもなく起こった

燐の頭部から青い炎がついたとおもったら瞬く間に燐の全身を覆った

それに恐れをなした腰ぎんちゃくたちは鳩殺しを置いて逃げていった


「嘘でしょ……?」


解放された奏は燐に駆け寄ることなくそのばに立ち尽くしていた


「何で燐が……」


――あの炎を持っているの?


燐が気がついたときにはすでに奏も消えていた

そしてこの数時間後、燐は魔神の落胤、悪魔として覚醒した

育ての親の獅郎の命と引き換えに



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