再会 side奏


正十字学園町――南十字通り


どこか中華街に似たここは今日も人で賑わっていた

すれ違う人々は学生、カップル、観光客など様々だ


「相変わらず人が多いなー」


そんな中、メモ片手に難しい顔をする自身を甘味王と称する少女がいた


「ったく、せっかくの春休みだってのに……ぶぅ」


頬を膨らませ、今ここにいない依頼主へ不満を漏らした

咥えていたチュッパチャップスを手に取ると柄の部分をコロコロと転がし始めた


「あーあ、こうなるんだったらさっさとどこか遊びに行けば良かっ――」


ふ、と気を抜いたその瞬間、手からチュッパチャップスが転がり落ちた


「!?(やばっ!!)」


慌てて手を伸ばすもチュッパチャップスは地面でワンバウンドすると、


バギッ!!


無情にも通行人に踏まれてしまった


「ギャアァァァァァァァ!!」


奏の悲鳴と誰かの悲鳴が通りに広がった


「お気に入りのココナッツ味が……!」


粉々に砕かれた無残なそれを見ながら少々涙ぐむ奏

言いようのない虚しさは怒りへと姿を変え、その矛先は踏んだ相手へ


「やいやいやいやい!! あたしのお気に入りのココナッツ君を何て事してくれたんだ!!」


周りの通行人も何だ何だと騒ぎ出すのを尻目に相手の胸倉をつかんだ


「わ、わりぃって。でも俺だって好きで踏んだわけじゃ――」

「言い訳無用! 食べ物の恨みは恐ろしいってことを思い知らせてやる!」


装備していた買い物袋で一発殴ってやろうと振り上げた時、相手は思わぬ言葉を呟いた


「奏?」


ピタリと一時停止

勢いを失った買い物袋がぶらりと揺れた


「……?」

「お前、もしかして立花奏か?」

「え、誰?」

燐「俺だよ、俺。奥村燐! ホラ小学校の頃一緒だった」


その時、彼女に電流が走った!


「あああああ!! 思い出した!! あたしの給食のデザートよく掻っ攫っていた燐か!!」


思い出すところが違う! とがっくりと肩を落とす燐に対して奏は先ほどの怒りを忘れて嬉しそうだ


燐と奏もともと小学校6年間共にしたいたずら仲間だったのだが、卒業と同時に彼女は諸事情により転校してしまったのだ

実に三年ぶりの再会だそうで


「わあマジで燐!? すっごい久しぶりー!」

「ホントだな! 元気にしてたか?」

「もちろんこの通り! 燐は? 弟君も元気にしてる?」


思わぬ再会に喜びを隠せない2人

奏はお使いを、燐は面接を忘れて話し込む


「相変わらず生傷が絶えないようだねー」

「ん? ああ、まあな」


満面の笑みを浮かべる奏にどこか気まずそうに頬を薄くそめる燐

そんな感動の再会もつかの間――


――運命の歯車はゆっくりと動き出す


「奥村くーん」



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