独戦


奏たちが魔法円・印章術の授業を受けている頃、綴はメフィストに呼ばれ、彼の執務室にいた


「で、何の用だ」


自分の部屋でもないのにソファに踏ん反り返る綴はまさにこの部屋の主のようだ

対する本当のこの部屋の主であるメフィストは執務机に腰をかけている


「どうですか? 様子は?」

「奏なら毎日塾が楽しそうで何よりだが? 奥村燐のほうも今のところこれといって目立った行動もない。奥村のほうは少々心配性がすぎるがな」

「違いますよ。あなたのことです」


メフィストの真意がわからず眉をひそめる綴


「別に。特に何も」

「そうですか。それなら安心しました」

「なんだ気持ち悪い」


綴は道端につばをはき捨てるように言った

やれやれとメフィストは首を振りつつ、ポンッとティーセットを出す

淹れたての紅茶をわざとらしく高いところからカップに注いだ

綺麗な琥珀色の滝は瞬く間にカップに吸い込まれていった


「どうぞ」

「……」


出された紅茶をしばし見つめた後綴は手を伸ばし、一口


「どうですお味のほうは?」

「普通」

「相変わらず手厳しいですねえ」

「紅茶よりコーヒー派だからな」


それでも再び口をつけるということはそんなに嫌いでもないらしい


「それで? わざわざ呼び出してこれだけとはないんだろう?」

「さすが、話が早くて助かります」


それでは本題に入りましょうかと飲み終わったカップを指を鳴らし、片付ける

そして執務用の立派な椅子に腰を預け、引き出しからある書類を取り出した


「今回の討伐対象です」


バサリと書類の束が綴の目の前に落とされる

無言でそれを手に取り、ぱらぱらと何枚か捲ってみる

そこにはさまざまな悪魔が写真付きで載っており、下級から上級まで幅は広い


「ちょっと待て、これくらいの下級なら他の奴に任せても大丈夫だろう!」

「いえ、これにはちょっとしたワケがありましてね。あまり表向きにしたくないのですよ」


ひじを突き手を組むメフィストは目を細めて綴を見る

2人のにらみ合いが続くも、舌打ちをしてすぐに綴は目をそらした


「……わかった。今回はこれだけでいいんだな」

「いやあ助かります! ああ、もちろんこれは奥村先生にも内緒ですから」

「この間の祓魔師は一人で戦えない云々はどこいった」

「それとこれは話が別ですよ」


綴はあきらめたように深いため息をつく

2人の話が終わったちょうどそのタイミングでノックが飛び込んできた


「それじゃあお願いしますよ」


メフィストは最後にそれだけいうともう下がっていいですよ合図を出す

一応上司に対する礼儀として綴は一礼してから部屋を出た


「っ、ネイガウス先生」

「……最條か」


ノックの主はネイガウスだった

ネイガウスがここにいるということは授業も終わったらしい

綴は軽く会釈だけしてその場から離れた


「何が一人では戦えないだ。私は十分一人でやっていける」


だって今までだってずっとそうだったじゃないか


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