称号


本格的な夏の到来に塾も忙しくなってきた頃


「夏休みまでそろそろ一ヶ月半を斬りましたが、夏休み前には今年度の候補生認定試験があります」

「候補生にあがるとより専門的な実践訓練が待っている。故に試験はそう容易くはない」


と、雪男に続いて綴が補足をする


「エスクワイヤ?」


と言う燐にしえみが「エクスワイアだよ」と間違いを指摘した


「……そこで来週から一週間、試験のための強化合宿を行います」

「合宿ですか?」


奏が手を上げて質問した


「ええそうです。先ほど綴さ、いえ、最條先生が仰ったとおり、試験はそう簡単に合格できるものではありません。みなさんを無事に合格させるための合宿です」

「それでは合宿の参加不参加と取得希望の『称号』を今から配る用紙に記入して月曜日までに提出を」


雪男の代わりに綴が皆にプリントを配る


「マイスター? 称号ってなんだ?」


さっぱりな燐はしえみに聞くも、しえみも似たような状態だった

「仕方ねえなあ」と燐は京都組のもとへ聞きに行った


「しえみちゃんはどうするの?」

「え、えっ?」


不意打ちに近いものを食らったしえみはびくりと肩をあげた


「称号だよ、称号」

「えっと……恥ずかしいんだけど、称号って何か教えてくれるかな?」

「いいよ! 称号っていうのはね――」


奏が得意そうに説明してるのを聞く一方でしえみは自分の道について考えていた


「――ってわけなんだけど、わかった?」

「う、うん! 何とか。それで奏ちゃんはどうするの?」

「それがまだ決まってないんだよねえ……」


そういって奏は背もたれによしかかった


「あたしって運動神経あんまりよくないから後方支援とかがいいかなあって」

「え、奏ちゃん運動神経悪いの!? 全然そんな風に見えないけど……」

「あははは……よく言われる。でも本当に体力も平均以下だから騎士とか竜騎士には向いてないと思うんだ」

「そっかあ」


しえみは配られたプリントを凝視する

自分には何があっているのだろうと

ちらりと奏を見れば、彼女も同じようにプリントを上に上げながら凝視し、うーんと唸っている


「奏ちゃん、月曜日まで時間はあるし、じっくり考えたらどうかな?」

「それもそうだね!」


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