友達


「じゃあねー!」

「ばいばーい奏ちゃん」


クラスに馴染み、友達も出来た奏は彼女らと別れ、今日も祓魔塾へ行く

周りに人が誰もいないことをしっかりと確認すると、奏はポケットから塾へ通じる鍵を取り出した

がちゃり

錠が外れる音

扉を開ければもうそこは祓魔塾だ

初めて来たときはまよってしまったが、あれからもう何度も来ている

さすがにもう迷うことはなかった

奏は自分の頬をぱちんと叩くと、


「よしっ、今日も頑張るぞ!」


と気合を入れた

すると前方に最近見かけるようになった人影

ついこの間入塾してきた杜山しえみだ


「しえみちゃんおっはよー!」


元気欲声をかけたつもりだったが、びくりと彼女の肩が揺れた

そしてどこか恐れるようにしえみは振り返った


「えっと、あの、……おはよう」


今にも消えそうな声でしえみは答える


「ど、どうしたの!? 具合でも悪いの!?」


あまりの声の小ささに奏はしえみに駆け寄ると熱がないか手をおでこに当てたりした

肌は白いし、見るからに病弱そうだ


「だ、大丈夫だよ!」

「本当に? 本当に大丈夫? 無理してない? 医務室行く?」


質問攻めたじろぐしえみはまた小さな声で「大丈夫だから」と答えた


「ならいいんだけど……」

「ご、ごめん」


思わず萎縮するしえみ


「き、気にしないで! あたしが勝手に勘違いしただけだから。あ、どうせならこのまま一緒に教室まで行かない?」

「う、うんいいよ。あ、あのね立花さん――」

「そんな『立花さん』なんてかたい! ほら友達なんだから奏ーとか奏ちゃんとかでいいって!」

「ともだち? 本当に?」

「そうだよー。あたしとしえみちゃんのこと。え、もしかしてあたしと友達なの嫌だった?」


急にオロオロしだす奏にしえみは慌てて今度は少し大きな声でそんなことないよ! と返した


「あ、あのね。あたし、友達とかいたことなかったからどう接すればいいかわからなくて……」

「そんなのてきとーでいいよ。そりゃあ誰だって初めはそうだけど、そのうちわかるって!」

「そうかな?」

「そんなもんだよ」


にこりと奏が笑うとしえみも少し恥ずかしそうにだが、笑った


「しえみちゃん笑うと可愛いね!」

「そ、そう? あははっ、照れるなあ……。ありがとう」


顔を少し赤らめるしえみはゆっくりと右手を差し出した


「じゃあ奏ちゃん、あたしと友達になってください!」


と頭を下げた

すると奏は一瞬、目を丸くするが、


「よろこんで! よろしくねしえみちゃん!」


と、笑顔でその手を握り返した


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