第一次マフィン争奪鬼ごっこ
※いつも以上にキャラが崩壊しています
※なんかそれぞれ友情を超えた感情を持っていたり?
※あと何か無駄に長いです
※馬鹿です、というか馬鹿しかやってません
↓いいですか?↓
「今日、みんなに集まってもらったのは他でもない」
机に肘を付き、口の前で指を組む幸村
いつもに増してその瞳は険しい
机を囲むのは、テニス部レギュラーメンバーだ
「仁王、今日の報告を」
「プリッ」
名指しされた仁王は静かに立ち上がると、イリュージョン用の眼鏡をかけ、指で押し上げる
「今日現在、目標が誰かに渡すという情報は入ってないプリッ」
続いて丸井が席を立つ
「同じく今日現在。さりげなくアプローチしてみたけど、効果なしだぜぃ」
「そうか。報告ご苦労」
幸村のねぎらいの言葉に二人は着席した
二人の報告を受けて幸村が静かに言う
「さて、非常に厳しい状況に立たされているわけだが――」
「ちょっとちょっとちょっとォォォォ!! あんたら部室で何やってるんスかァァァァァ!?」
バアンと乱暴に開かれたドアから切原が盛大に突っ込んだ
一流芸人顔負けのツッコミの登場
「うるさいよ赤也。何って、ただのミーティングだけど」
「いや、確かにミーティングだけど、議題がどう考えてもおかしいっスよ!?」
ダンッと切原はその議題が書かれたホワイトボードを叩いた
そこに書かれている議題とは
『如何にして#四条#(石原#)の調理実習のお溢れに預かるか』
「なんすかこれ!? どう考えてもおかしいじゃないっスか!!」
わけがわからないっすよ!? と熱弁する切原
「だいたい柳さんや副部長、柳生先輩まで何真剣に参加しちゃってんの!? あんたらこっち側の人間っスよね!?」
どうでもいいが切原のいう『こっち側』というのはツッコミ、もしくは止める側という意味である
「愚問だな、赤也」
冷静に答える柳
「俺も#四条#のおこぼれに預かりたいからだ」
カッと開眼する柳に切原はこの人こんなキャラだっけと真面目に考えた
「べ、別に俺は#四条#からもらいたいなど――」
「はいはいツンデレ乙。何だかんだ言って一番乗り気のくせに」
「なっ!」
茶化す幸村に赤面する真田
副部長もこんなキャラだっけと答えのない自問を繰り返す
ちなみにレギュラー陣の中で唯一、四条の手料理を食べたことがないのは真田だったりする
柳生とジャッカルは一度ちゃっかりもらっていた
彼ら曰く、彼女のあの料理の腕前ならお菓子の方もさぞ美味しいだろうとのこと
「……別に#四条#じゃなくても、先輩たちなら日常的にお菓子もらってるじゃないっスか。しかもたかが調理実習ぐらいのお菓子なんて」
そう言うと、次の瞬間幸村にアッパーをくらっていた
「馬鹿野郎! 彼女だからこそ意味があるんだ!」
何やら熱弁する幸村を他所に切原はこの部の未来が心配になった
ダメだ、この部、早く何とかしないと……
すると丸井が肩に腕を回してきて、耳元でこういった
「お前だって本当は#有美#から欲しいだろぃ?」
したり顔で言う丸井に切原は
「な、なんで俺があいつのから!」
と全力で否定しているが、体は正直で顔は耳まで真っ赤だ
「人間ときには正直になったほうがいいぜよ?」
さらに反対側から仁王が攻めてくる
切原とて全く興味がないわけではない
だが、それを期待するのは何だか切原自身のプライドが良しとしなかった
要するにツンデレなのである
「と、に、か、くこのままでは望みは希薄だ。というわけで最終手段、プランXを実行する」
そして調理実習当日
いつもに増して切原は学校が憂鬱だった
「はあ……」
「わかめくんがため息なんて珍しいね。何かあった?」
登校してきた#識#が切原に話しかける
「え、ああ。……まあな」
「ほっとけほっとけ。どうせまた呼び出しくらったんじゃねえの」
「ちげえから!!」
話題の渦中である二人に打ち分けるわけにもいかず、切原はため息を吐くばかりであった
「そういえば今日調理実習だったなー」
「マフィンだっけ?」
「そうそう。どうせならウェディングケーキ作ろうぜって話だよ」
「馬鹿。誰が食べるのよ……」
「オレだよ!!」
親指を自身に向ける#有美#の目は非常に輝いている
そういえばこいつ実は大の甘いもの好きだったなあと#識#は思った
わりと調理実習の話題で盛り上がる#識#と#有美#
切原はその話を胃が擦り切れる思いで聞いていた
「あ、わかめくん。同じ調理班だけどわたしの言うこと以外は一切何もしないでね」
「お、おう。もとよりそのつもりだ」
「#有美#、あんたもよ?」
「へーいへーい」
わかったのかわからないのか#有美#は生返事をした
そして切原はさりげなく、本当にさりげなくこう言った
「……そういやあお前ら出来上がったらどうすんの?」
「ん? そんなん自分で食うに決まってるだろ」
「わたしはとりあえず家庭科の先生にあげるわね。点数アップ狙いで」
「そ、そうなのか」
先輩、たぶんもらえそうにないっす……と心の中で報告するのだった
「で、出来た……」
#識#、#有美#、切原、その他同じ班の男子Aと女子Bの前には焼きたてのマフィンが置かれていた
定番のチョコチップだけでなく、#識#が先生の許可を得て持ってきた抹茶、メイプル、紅茶など、さらには溶かしたマシュマロを乗せたりと、他の班とは違う工夫がひとつも二つもされていた
ただし数個、タコや蛙の足のようなものが飛び出たり、あからさまに色がおかしいものもある(#有美#作)
「何だかんだあったけど無事できてよかったわ……」
この『何だかんだ』には色々あった
例えば切原が計量を間違えかけたり、#有美#はオーブンを爆発し損ねたりと
同じ班員の男子Aと女子Bはというと普通にいい働きをしていた
「うわあ#四条#さんありがとう! おかげで美味しそうなマフィンが出来た!」
「どうしたしまして」
女子Bは嬉しそうにほかの班にいる友人のもとへ向かった
男子Aも同じくお礼を言って友人のもとへ自慢しに行った
「なんであんたらはこんなにも不器用なんだろうね」
精一杯のイヤミを込めて#識#が言う
「ズビバゼンデジダ……」
たぶん#識#がいなかったら本気で得体の知れないダークマターができていただろう
といっても充分ひどいものが数個できているのだが
今もまだタコのような足は焼いたにも関わらずうねうねと動いている
「ま、まあ終わりよければ全て良しってことにしとこうぜ……?」
「あんたがいうセリフじゃねえよ!!」
スパンと#識#のツッコミが飛んだ
「それでわかめは出来たマフィンどうすんだ?」
「え、ああ、俺?」
「ご家族にでもあげるの?」
「あ、あー……」
頭に浮かんだのは邪智暴虐と傍若無人の化身である姉が浮かんできたが、さすがにこんなにうまく出来たのを上げるのはもったいなさすぎる
「ま、まあ先輩にでもあげるっすよ……」
「ふうん」
と、#有美#がつぶやいたとき
入口の方で突如、黄色い声が上がった
何事!? と三人がそちらのほうを向くと、驚愕から唖然、そして蒼白に変わった
「やあやあやあ」
そこにいたのはなんとあろうことか幸村率いるテニス部メンバー
女子の黄色い声の原因は彼らだった
クラスの女子に囲まれ、次々と調理実習のマフィンを渡されるレギュラー陣
囲む女子の目はハート形だ
「……何、あれ?」
「俺は何も知らない」
「これさ、死亡フラグじゃね?」
ふ、と#有美#がレギュラー陣と目が合った
それを合図にやんわりと女子をかき分けながらこちらに向かってきた
「ばっきゃやろう!! 何目ェ合わせちゃってるの!?」
「ちげえよ! 不可抗力だ!! オレは何も悪くねえ!!」
なんて言い合っているうちにもうすぐそこまで来ていた
わたわたと逃げ場を探す2人
すると、偶然にも換気のために窓が空いていた
ついでにここは一階である
「#識#! とりあえず逃げるぞ!!」
「え? あ、ちょっォ!?」
ちゃっかり出来たてのマフィンを三角巾代わりに使っていた大きめのハンカチにくるむと窓から調理室から脱走した
こうして第一次マフィン争奪鬼ごっこの幕が上がった
このあと#有美#作の殺人級マフィンが炸裂し、数人保健室に運ばれたとかないとか真偽のほどは当事者のみぞ知る
おまけ
「お前よくこんな人殺せるようなマフィン作れるな……」
「もふ? そうか? 普通に美味いけど?」
「はぁ!? ちょ、お前の味覚どうなってんの!?」
「失礼な! ちゃんと正常だわかめ野郎」
「んなっ! わかめじゃねえって言ってんだろうが!!」
「うるさいなーこれでも喰らえ!」
「もぐ? うぎゃあああああああああああああああああ!!」
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まずはめぐるさん7700hitありがとうございます!!
たぶん初めてとなるキリリクで頑張ってみました!
え、長い?
すみません、本当はもっと長くなる予定でしたが無理やり終わらせました……
なんでしょうね、書いてる私だけが楽しい作品になってしまいました
本当はもっとわっちゃわっちゃさせたかったのですが、なんだろう、完全失敗しましたね……
あと#有美#の料理の腕前がいかに殺人級というのをもっと全面的に押し出したかったです
味覚も実は正常の部分もあればかなりイカレてる部分もあるんです
あれ、なんか補足説明になってる←
本編はここで無理やり終わらせましたが、このあとテニス部が見事な連携プレーを発揮し、見事マフィンを手に入れます
こんな作品でよければ受け取ってください!
リクエスト本当にありがとうございました!!
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