◎世界閉じる場所
「ハッ! 寝過ごした!?」
ついつい環たちに釣られて寝てしまった
バスの中――かと思ったら
「……ここどこ?」
あたり一面白、白、白一色の空間
白一色のせいで立体感がなく、立っているのか浮いているのかどうかすらわからない
「バスの中じゃないよね」
確かに目を閉じる前はいつものメンバーと縁日に行って帰りのバスに乗っていたはずなんだけど
誘拐――というわけじゃないだろうし
「まさか死んだとか……?」
ハハッ、まさかね
いやでもその可能性も無きにしも非ず
とりあえず出口を探そう
もしかしたら楓たちもここにいるかもしれない
そう思うと何故か絶対に見つけ出さなければという使命感が出てきた
――――――
――――
――
歩くことたぶん5分
歩けど歩けど眼下に広がるのは白だけだったが
「梓ー」
「……楓?」
後ろから聞き覚えのある声に振り向けば、
「ドヤァ☆」
組体操でよくある飛行機をしている楓達がいた(わからない人は『組体操 飛行機』でぐぐってね☆ by楓)
ちなみに上に乗っているのは一番軽い環
「……えーっと、出口はどこかなー」
何も見なかった、わたしは何も見なかった
今起こったことを記憶から抹消して出口を探す
「えっ、ちょっ! 梓見捨てないで!」
「ちょっ楓勝手に動くな! 落ちる!」
「環も動いたら――!」
見事バラバラの動きをする飛行機はあっという間に崩れた
「あちゃー……」
形はどうあれ、3人と合流できたことはよかった
ちなみに言いだしっぺは楓で「どうせならインパクト迫力ある登場の仕方しようぜ!」という提案の元、あの飛行機ができたらしい
あと「状況がよくわからない時だからこそギャグを狙おう」という
至極どうでもいい
「それで梓、ココドコだと思う?」
今さっきのおちゃらけた雰囲気は何処へやら、環が聞く
「さあ?」
わいわいと棗と楓(が一方的に)じゃれあう(弄る)のを見ながら状況を二人で整理する
覚えていることは同じで、一体ここがどこで、誰が、何のために、どうやってここへ連れてこられたかはわからなかった
「環の力で何とかならない?」
環の空間操作ならこんなところ赤子の手をひねるより簡単に脱出できるはず
だが、
「それがさっきから何度も試してるんだけどねー。どうやっても出るところは同じなんだよね」
「それってつまり」
「どう足掻いてもあたしの力じゃ無理ってこと」
当てにしていた環の異能が使えないとすると、それはいよいよここからの脱出が限りなく不可能に近くなる
「とりあえず適当に歩いてれば壁にぶつかるんじゃない?」
そんな当てずっぽうで行けたら今苦労してないよ
「あ、ねえ! あれ何だろう?」
楓が何か見つけたようで声を上げる
「あれドアじゃね?」
棗の言うとおり、白いこの空間にポツンそれは立っていた
どこにでもありそうな茶色の扉
「一見、ただのドアね」
「ドアだね」
「ドアですな」
「ドゥアァン☆」
……しーん
「裏に何かある?」
「何もないっす大佐」
「え、ちょっ、自分の番で白けるのやめようぜ! ついでに普通に何事もなかったようにスルーしないで!!」
まあ棗がこういう不遇なのはいつものことだからもう気にも留めない
環と楓がドアを調べるも特に何も仕掛けはない
「よしじゃあ開けるか」
環の掛け声と同時に棗を除いて一歩下がる
「え? なんでみんな一斉に下がるの?」
「さあ棗、ショータイムだ」
無駄にカッコいい決めポーズを取る環
「大丈夫! 骨はちゃんと拾うから!」
「自分、死ぬ前提かい!」
「ほらほら文句言ってないでさっさと開ける!」
ぐりぐりと棗をドアにくい込むように押し付ける楓
「もうこんな役やだぁ」と半分ぐずりながら棗ドアノブを掴む
なんとドアの先に広がるのは白ではなく、気持ちいいほどの青だった
そして開けた瞬間、楓が
「そおい☆」
棗に愛のある(笑)タックルをかました
バランスを崩した棗はそのまま扉の中へ
「なんて自分だけこんな扱いされてたまるかァ!」
せめてもの報いと言わんばかりに棗は楓の腕を掴んだ
「え」
「ちょっ」
「おまっ!」
そこからは打ち合わせたように楓からわたし、わたしから環と数珠繋ぎのように腕を掴んで、青の中へ落ちていった
abmarsch
アプマーシュ:出発