拾った猫は責任をもって最後まで面倒を見るべし

神楽の強烈な一発からなんとか回復した銀時は面倒くさそうにソファに踏ん反りかえっていた

新八は梓たちの前にお茶を置き、銀時が座っているソファの後ろに立つ

その隣には神楽

そして向かい側には緊張を隠せない梓と我が家のようにくつろぐ楓


「で、お前らは何もんなわけ? いきなり空から落ちてきて一体何? そりゃあもう新手の詐欺かと思ったぜ」


銀時が問う


「何もんって言われても……デジ●ン?」

「いやデ●モンはないだろ!」


と横から梓のツッコミが飛んでくる


「残念だが、俺は人説明できるほどうまくできていないのさァ!(ドヤァ」

「そこ自信満々に言うところじゃねえから!!」


思わず新八と梓の声が見事にハモった


「シンクロ率半端ねえアルな」

「いやあそれほどでも〜」

「褒めてねえからっていうか楓のことじゃねえから!」


突っ込むとき梓の口が悪くなるのは癖だ


「でも元々うちのことなんてアテにしてなかったでしょ?」

「まあね」

「うわっさりげなく傷ついたー」

「お前本当面倒くさい」


ここで梓がため息を一つ

頼りにしてなかった楓に代わり、自身も整理するがてら、銀時たちに身に起きたことを話す

みんなで夏祭りの帰りにバスに乗ったはずが気がつけば白い空間、さらにいきなり空に放り出されたなんてわけがわからない、と梓は思う

そして恐らく自分たちはこの世界の住人でもないことも話した

限りなく確定に近い憶測にすぎないが

もしかしたら精神疾患だと思われて病院に突き出されてしないだろうか

そんなのは杞憂で、思いのほか三人は真面目に聞いた


「そりゃあなんか面倒なことに巻き込まれたなァ」

「まあ何かに巻き込まれるのは今に始まったことではないんで」


ちらりと楓を見やる


「え、何? うちのせい? うちのせいってか!?」

「別に」


しらーっと楓から視線をずらす

それだけで新八はどこか親近感を覚えたとか


「もちろん信じてくださいなんて言いませんが、確かにこれはわたし達の身に起きた

真実です」

「ふうん。新手の天人ってわけでもなさそうだな」


銀時はそう分析するが、楓が「あまんと? あまんとってなに?」と梓に聞くが彼女も首をかしげるばかり


「ああ、でも普通の人とは違うかなー」

「というと?」


楓の言葉に新八が聞く

梓は「ああそうだね」と頷くが、口を閉ざしてしまった

代わりに楓が言った


「うちらねーちょっとした超能力っていうの? そういうのが使えるんッスよ☆」


けらけらと笑う楓に万事屋三人は目を点にした


「あ、その目は疑ってますなー! いいでしょう! この力見せてあげます」


そう言うと楓は立ち上がると「ほあたっ☆」と新八を指差した

すると、


「ん? なんか頭が熱い――ってあっつう! え、何マジで燃えてる!?」


どこからともなく新八の頭から煙があがり、小さな火が点った

「熱い熱い!」と喚く新八をよそに神楽は「すげえアル!!」と目をキラキラさせていた


「ドヤァ!!」


本日二度目の楓のドヤ顔


「銀ちゃん! これマジもんアル!!」

「え、マジで手品とかじゃないの?」

「タネも仕掛けもありましぇーん☆」

「っていうかアンタらもう少し僕の心配しろよ!!」


代わりに梓が新八のボヤ騒ぎをおさめた


「君もなんかできんの?」

「えっと実際お見せするのはできませんが、えっと、まあ……その、傷を癒すことが

できます、物理的に」

「ほー」


相変わらず死んだ魚のような目だが、その奥にある疑惑は晴れていた


「あの今更ですが、坂田さんたちが助けてくださったんですよね。ありがとうございました」


深々と頭を下げる梓


「いえいえ。人として当然のことですから。ね、銀さん?」

「んー? んまあ、あのまま放っておくわけにもいかなかったしな」

「でも助けて頂けなかったら今頃……。本当にありがとうございました」


もう一度お礼をいい、梓は頭を下げる


「あ、銀ちゃん照れてるアルぅー」

「ば、バカッ! 照れてねえっつーの」

「え? でも顔赤いですよ」

「そりゃああれだ。お前のメガネの度が合ってねえんだろ」

「そんなことないですよ!」


神楽と新八の二人からいじめの的になった銀時は慌てて話題を逸らした


「そ、それでこれからどうすんの?」

「あと二人、一緒にきた友達がいるので探そうかと」


環と棗が無事にいるという確証はないが、きっと殺しても死なない二人のことだ

どこかで図太く生き残っているだろう


「探すってどこをですか? 心当たりとかはあるんですか?」

「いんやあ。適当に探すしかないよねー。ね、梓?」

「アテなんてないからね。でもこの世界にいることは絶対だから、地道に探すしか」

「じゃあその間住む場所とかどうするアルか?」


神楽の言葉に「うっ」と梓は言葉に詰まった

持っているお金はこちらで使えるはずがない

恐らくホームレス生活は免れない


「江戸だけでもかなり広いですから。一日で見つかるということはまずないと思いますよ」


と、ここに来て新八と神楽の言わんとしていることがわかってきたのか、銀時は冷や汗をかきはじめる


「オイオイオイ! ちょっとお前ら何考えてんの?」

「え? まさか銀さん、こんなか弱い女の子達を黙って追い出すつもりですか?」

「新八ィ。さすがの銀ちゃんもそこまで鬼畜じゃないアルよ。ね、銀ちゃん?」


ずもももももっと黒い何かが新八と神楽の背後に現れる

一方でますます銀時の汗の量が増えた


「え、ちょっ、お前ら……」

「いいですよね、銀さん」


もはや疑問形ではなくそれは断定だ

有無を言わさない笑顔でずいずいと言い寄る新八と神楽に銀時はついに、


「わーったよ! うちで面倒見ればいいんだろ!? ああ!?」

「さすが銀さん」

「よっ! 銀ちゃん男前!」


ついに折れた銀時だが、


「いやいやいやそんなご迷惑かけるような……」

「いいんですよ。家主もこういってることですから!」

「新八のいうとおりネ! 飯は大人数で食うほうが美味いアル!」

「ですが……」


まだ抵抗がある梓に銀時は立ち上がると、彼女のすぐそばまでいく

するとぽんっと頭に手を置き、


「気にすんな。別にガキの一人や二人増えたところで構いやしねえよ」


そのままわしゃわしゃと彼女の頭をどこか照れくさそうにかき回す


「そうだよ。この際お世話になっちゃおうさ」

「楓……」


お前は少しは遠慮という言葉を知れと言いたいところだったが、それは心の中でこぼす梓


「あの……本当にお世話になってもいいんですか?」

「ああ、いいから黙ってお世話になれ」

「それじゃあご好意に甘えて……家事ぐらいならお手伝いできると思うのでなんでも

言ってください。よろしくお願いします」

「あーいいっていいって。別に大したことじゃねーから」


頭を下げる梓に銀時はまた少し照れくさそうに視線を逸らした


「今日の銀ちゃんはよく照れるアル」

「おい神楽、何か言ったか?」

「べっつに〜何も言ってないアル」


こうして梓と楓は万事屋にお世話になることになった


con sciotteza
コン・ショッテツァ:緊張を解いて




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