違和感仕事しろ

「……ん、んん〜……うん?」


うっすら目を開ければ茶色の天井がぼんやりと見えた

ぐわんぐわんと頭が痛い

……あれ、そういえばわたしどうしたんだっけ?

空から落ちて、環たちと離れて、叫んで、それから――


「あ、生きてる」


中途半端に起きていた頭がようやく覚醒した

起き上がって手や足を確認するが、骨折どころかかすり傷一つない

そしてここがどこか……

きょろきょろと見渡す

たぶん誰かの寝室なんだろう

しかし身に覚えはない


「本当にここどこ!?」


軽い混乱状態に陥っていると、スーっと前の襖が開いて、メガネをかけた少年が出てきた


「あ、銀さん。起きたみたいですよ!」


彼は襖の向こうにいる誰かに言った


「あの、ここは――」


ここがどこだか聞こうとしたのと同時に


「梓ーーーー!!」

「ぶべらっ」


メガネの彼を踏みつけて楓が飛び出してきた


「大丈夫? 痛いと来ない? ああもうマジで二度と目が覚めないかと思ったよォオオオ!!」


楓が涙ながら力いっぱいわたしを抱きしめた


「だ、大丈――ぐ、ぐるじい」


あ、やばい首が……というか死ぬ

あと少し遅ければ確実に窒息死するところだったところをメガネの彼が楓をひきはがしてくれた


「ぱっつぁん、せっかくの感動の再会を邪魔するなんて下衆の極みだな!」

「いやいやいや、感動の再会を最期のお別れにしようとしてたのはあんただよ! ていうか『ぱっつぁん』って呼ばれるほど僕らそんなに仲良かった?」

「もう照れちゃって……」

「いや照れてねえし!」


楓の独走っぷりも健在のようで一安心

楓もようやく落ち着いたところでメガネの少年、志村くんに案内され、隣接しているリビングに通された

そこにはどこかの誰か(環のことである)を連想させるような死んだ魚のような目を持つ銀髪の人と中華風の少女、そして自分よりゆうに大きい白い犬がいた

銀髪の人は顔に週刊雑誌を乗せ、ソファで寝ている

中華風の少女はその犬と戯れていた


「銀さん、起きてくださいよ。もうひとりの子、起きましたよ!」

「……」


志村くんが何回か揺さぶるが、起きる気配はない


「もう……。仕方ない、神楽ちゃんお願い」

「おおう! 任せるアル」


意気込んだ彼女が銀髪の人のもとへいくと、


「ホァアッチャアアアアア!」


かれの腹めがけて鋭いチョップが落ちた


「がふっ!?」


うわああ、容赦ねえ……


「今日もいい仕事したアル」


ふひーと汗を拭き取りドヤ顔を決める少女


「あ、すみません。なんか騒々しくて……」

「い、いえ。気にしないでください!」

「今、お茶持ってくるので反対側のソファに座って待っていてください」


お茶なんて気を使わなくても……

そう言おうと思った時には、志村くんはすでに姿を消していた


「まあまあおとなしく待ってようさ」


そういう楓は例の犬に頭をかじられ、血を流していた

お前はここに馴染みすぎだ!


armonioso
アルモニオーソ:よく調和して




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