肉を切らせて骨を断つというのを身をもって学ぶ

えー……どうも五十嵐棗ですたい

いつものメンバーと一緒にお祭りに行ったらカクカクシカジカ四角いムーb、じゃなくてお空の上

何かにぶつかって気を失ったあとのことはよく覚えてませんが、今地上にいてかすり傷はあれど元気に生きてます

生きてることは生きてるだけど……


「てめえ、何モンだァ?」


現在進行形で今まさに目の前で刀を突きつけられています

しかも黒い服着た変な人たちに囲まれてます


「えええええええええええええ!?」


え、なんですかこれ

なんのドッキリですか

カメラとどっきり大成功☆の看板を持った人はどこから現れるんですか

パラシュートなしスカイダイビングのお次は侍ごっこですか

といっても刀持ってる人が着てる服はわりと現代風なんだけど

いやいやそれよりこの人瞳孔開いてませんんんんんんんんん

突き刺すような視線は本当に一人や二人殺せそう


「テメェ、どっから来た」


何処から来た? 愚問だな(人は混乱が頂点に達するとかえって冷静になる(嘘)


「空、からです」

「ハア?」


まあ至極当然な反応デスヨネー

いや、でも誰か自分が落ちてくるところ見られていたと思うんだけど


「ふざけんじゃねぇ。真面目に答えろ。これが見えねえってのか」


そう言ってわざと刀をちらつかせる

うわあこれモノホンだわ

だって輝きとか明らか違うもん


「てめえ命が惜しくねえのか?」

「いや、あのですね、そういうわけじゃなくてですね。とりあえずここどこですか」

「頭沸いてんのか?」

「せめて死にゆく人の最後の願いだと思って聞いてください……」


ここでついに習得した秘技、DO☆GE☆ZAを披露するときが来たようだな

ずしゃあと土下座すると、見た目に反して情けがあるのか小さな声で「ここは真選組の屯所だ」と答えてくれた


「しんせんぐみ? しんせんぐみってあの新選組ですか」

「ああ? 真選組は真選組だろ」


ちょっと噛み合ってない気がする

こういうときインテリ組(環と梓)がいてくれると解説してくれて助かるんだけどな

そういえば環たちは大丈夫かな

なんか自分だけ生き延びたってフラグビンビンなんですけど


「ってそれだけは絶対嫌だアアアアアアアア!!」


どうせ死ぬならみんなと一緒が良かった

ああもうもしかしたらみんなあの世で自分のこと嘲笑ってるかもしれない


「テメェ本当に頭イカレてんのか?」

「もう手遅れかもしれないですたい」


いやいやポジティブシンキングだ棗

あの殺しても死ななさそうな3人のことだ

生きていればいつか会える!

信じろ、信じるんだ棗


「……あのーついでに『しんせんぐみ』ってどういうところなんですか」

「そんなことも知らねえのか?」


男が強い疑念の視線を投げかけてきたので自分はさらに強い無知な視線を送った

この作戦が功を奏したのか、また答えてくれた

しかも懇切丁寧に


「ふんふんふん。ようは警察みたいなものってことですね」

「まあそういうこった。それじゃあおとなしくついてきてもらおうか」

「あれ、自分なにかしましたっけ? 連れて行かれる覚えはないのですが」

「とぼけるんじゃねえ。立派な不法侵入だ」


いやいやいや不法侵入と言われてもこれは意図的に侵入したわけじゃなくて不可抗力で

むしろ自分は被害者だと言える

そう反論すると


「そんなことこっちは知ったこっちゃねえんだよ」


と見事に一蹴されてしまった


「いやいや自分、そんな怪しい人じゃないっすよ」

「怪しい奴の常套句だな。つか、服装からして怪しさマックスだろ」


そうかな、わりと普通だと思ってたんだけど

だが、ここで自分はあることを悟った

これはきっと何を言っても無駄なパティーン(パターン)だ

そうなると弱冠18歳にして前科持ち

それじゃあ他の3人に合わす顔がない!


「それは困るわー」


と、なれば自分に残された選択肢はただ一つ


――強行突破


立ち上る殺気からして真っ向勝負して勝てる相手ではない

だが今は勝ち負けではなく逃げれるか否かの問題だ

ならば勝算はゼロではない

幸いこの男の目にはただのか弱い少女に見えるはず

ならばそれを逆手にとって不意打ちし、逃走すれば

いける

本当は話し合いで穏便に済ませたかったけど、ちゃんと人の話きいてくれないこの男が悪いということにしておこう

許してくれ、自分は悪くない

作戦は決まったので次は逃走経路を確認

全力疾走すればなんとかなる距離だ


「おとなしくついてくる気になったか?」

「すみません。自分、大切な仲間が待ってるんです。こんなところで呑気に油売ってる暇なんてないんですよ」


そういうわけなんで――

そばにあった小石を掴むと


「喰らえ!」


相手に向かって放った

男は一瞬驚くも容易く刀で弾いた

だが攻撃を仕掛けるには十分な隙だ

馬鹿め! それはただの陽動だ! と心の中であざ笑う

咄嗟に左手にライトセイバー(笑)を召喚し、刀を光の熱で焼き斬る


「何っ!?」


きっといきなり刀真っ二つに斬られたことに驚いてるんだろうな

間髪いれずに強化した右手を相手の腹に一発

当たり所が悪ければたぶん内蔵損傷するかも

男は空気と共に少量の血を吐き、膝をついた

無駄な殺生を避けただけでも許してください

あとはこのまま突っ切れば!

周りにいた他の下っ端の人たちは怯えてこれっぽっちも動かない

これは幸い


「総悟! そいつを止めろ!」


さっきの男が叫ぶ

目の前にはいかにも栗毛の優男

これなら一発で仕留めてやんよ!


「そこどけえええええええええええ」


優男の目玉をくり抜く勢いで右手を繰り出す

もらった!

と思ったのは一瞬で、次の瞬間には視界にさっき嫌というほど見せつけられた青が映った


「――あり?」


そしてその次には鈍い痛みとともに意識が飛んだ


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グロッテスコ:怪奇な、突飛な、おかしな




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