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「いやはや、今日はやけにお客さんが多いですねえ」


雨上がりの下、水櫁は例の大木のもとにいた

彼女の前には数多の妖怪が今にも襲いかかりそうな雰囲気の中でも実にのんびりとしている

そんな水櫁の声に突っ込むように後ろから声がした


「水櫁っ!」

「おや、双蓮。夜這いに言ってたんじゃなかったんですか?」


からかうように言うと双蓮と言われた彼女はムキになって否定した


「夜這いとか冗談もほどほどにしてよねっ!」

「はいはい。そんなに怒らなくてもいいでしょうが。カルシウム不足何じゃないんですかあ?」

「うっさい!」


命が狙われてる中、夫婦漫才を繰り広げる2人

双蓮に遅れること数十秒、三蔵たちも到着した

目の前の妖怪を見て悟浄はあからさまに嫌な顔をする


「全く夜はお断りだってこの前も言っただろうが……」

「せっかくいい夢見てたのによォ!」


駄々をこねるオコチャマ2人を余所に八戒は水櫁と双蓮の前に立つ


「お二人は危ないのでさがっていてください」


八戒が気功を放つ体制をとるが、いつの間にか前に立たれていた水櫁に制される


「いえいえお客さんにご迷惑かけるわけにはいきませんから。ねえ双蓮?」

「何処の誰かは知らないけど、自分の身ぐらい自分で守れるっての」

「ちょっ、危ねえって!」

「ご心配なく」


水櫁の笑顔に思わず言葉を失う悟空

それを合図にか、妖怪たちは2人めがけて走り出した

まず最初に大斧を持った妖怪が水櫁に振りかざす

彼女はそれを最小限の動きで避け、腹に手刀を入れた

強く入ったそれは彼から大斧を手放すのには十分で、血が混じった胃酸を吐きながら倒れた

そして次々襲いかかってくる妖怪を同じように装備なしで軽くあしらう


「そろそろ行きましょうか」


一息ついたところで、彼女は両手を合わせると右手のひらからマジックのように何か出てきた

それを思いっきり引き抜くと出てきたのはギラリと輝く日本刀


「10分?」

「いや、5分で十分でしょ」

「後ろは任せましたよ」

「りょーかい」


刀を一振りした後、水櫁は自ら集団の中へ駆けていった

彼女から繰り出される一閃はどれも殺すというより舞うという言葉のほうが正しい

敵の攻撃をひらりと避けてはまるで空中に絵を描くように刃が動く

次々と屍と化していく仲間におびえた妖怪たちは目標を水櫁から双蓮へ変更した

声を上げながら向かってくる敵に双蓮は眉ひとつ動かすことなく頭を正確に撃ち抜いていく

その腕前は三蔵にも並ぶほどだ

数で押してくる妖怪が一瞬の隙をついて後ろから剣を振り下ろすも、


「遠距離だからって近距離ができないってわけじゃない」


それよりも先に双蓮の回し蹴りが決まった

しかし斬れど撃てどその数はいっこうに減らない

さすがに我慢の限界が来たのか、双蓮の額には血管が浮き出てきた


「そろそろ全部燃やしていい?」

「さすがに面倒くさくなってきましたし、お願いします」


今まで第一線で動いていた水櫁が引く

それと同時に双蓮は今までとは違った弾を装填した


「それじゃあいっちょやっちまいますか」


そういうと彼女は全弾を文字通り眼にも止まらぬ速さで撃った

しかし弾はすべて外れ


「はっ! そろそろ疲れてきたんじゃねーのか?」


調子に乗った妖怪たちはここぞとばかりに攻めてくる

妖怪たちが勝利を確信したのもつかの間、双蓮の口が歪む


「爆ぜろ」


瞬間、先ほど外れた弾が凄まじい音を立てて爆発

次々に妖怪の腕が、足が、手が、頭が吹っ飛んだ

爆撃が止んだそこにはもはや誰一人生きているものはいなかった


「5分18秒。まあまあってところですかねえ」

「上出来でしょ」


また一振りすれば刀は光のくずとなり、消えた

一仕事終えた2人はくるりと三蔵たちのほうへ振り返った


「ね、大丈夫だったでしょう?」


先ほどと何一つ変わらない笑顔で水櫁は言った


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