02
中は外からでは信じられないほど綺麗だった
見掛け倒しにもほどがある
そして彼女の厚意により夕飯も頂戴することになった
食べ終わった後、消化にいいとお茶までもらっている
「あー美味かったぁ!」
「お口あってよかったです。あ、申し遅れましたね。水櫁と申します。一応ここの住職です」
「これはご丁寧に。僕は八戒と言います」
「俺悟空! ごちそうさん!」
「沙悟浄だ。よろしくな水櫁チャン」
「で、そっちの不機嫌そうなのが」
「玄奘だ」
あえて三蔵の名を隠すのは前回の石林の件があるからである
幸い彼女は玄奘という名に反応することはなかった
「本当に汚くて何もないところですみません」
「いえいえ、雨風をしのげるだけで十分ですから」
「なあなあ! さっきの料理、水櫁一人で作ったのか?」
「いえ、自分だけじゃなくてももう一人いるんですが……」
言葉を濁して、三蔵達から視線を外した
「シャイというか人見知りが激しいと言うか、警戒心が強いと言うか……何か恥ずかしがって部屋からでてきてくれないんですよねえ」
困ったものですと手を頬に当ててため息をつく
「へえ。そうなのか」
「せめてお見送りぐらいは出させますので」
「気にしないでください。僕らが勝手にあがりこんでるだけですから」
水櫁がお茶を一口飲んで息をついたところで三蔵はここにきてからずっと気になっていたことを口にした
「あそこに見える木は何だ?」
三蔵が顎で指したのは降りしきる雨の中、怪しげにそびえたつ大木
この建物は『ロ』の字型でその中心にそれが立っている
大木には神社で見るような大きく注連縄が巻き付けられており、さらに大量の札がびっしりと貼られている
一種の化け物のようだ
「ああ、あれですか。あれは昔からここに生えてる神木です。自分がここに来る前からずっとあのままなんですよね。何でも木の下には死体が眠っているんだとか」
さらりと笑顔で言う水櫁に少々引き気味の悟浄と悟空
対して八戒は適当に相槌を打つだけ
三蔵もただふんっと鼻を鳴らして話は終わった
「さて夜も更けてきたところですし、そろそろお開きにしませんか?」
「それもそうだな。さすがに連チャン野宿は辛いぜ」
「お部屋ですが、なにぶん小さいところなので二人一組でお願いできませんかねえ?」
「十分です」
「それでは部屋へ案内しますのでこちらへどうぞ」
――そうして闇はさらに深くなる