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三仏神により牛魔王蘇生実験の阻止を命じられた三蔵一行は今日も今日とて西に向かっていた

茄陳の町から石林の寺院と色々あったがとりあえず順調に進んでいく

今日で長安を発ってから三週間目、ジープは深い山の中を走っていた


「なあ、今日もまた野宿?」

「そうですね、明後日ぐらいまではそうだと」

「あーダルっ」

「いい加減煙草が切れそうなんだが」

「俺、腹減ったー」


話のベクトルがまるで違う方向を向いている

もうこれが日常化しているので誰も突っ込みはしないが

太陽はすでに西の空に半分沈んでおり、東の空からはぼんやりと闇と雲がが迫ってくる

夜には降りだすだろう


「せめて雨宿りできるところがあればいいのですがねえ」


ハンドルを握りながらそれらしき建物がないか探す八戒

すると、悟浄が声をかけた


「おい、こっちに何かあるんじゃね?」


悟浄の言葉にブレーキをかけ、彼が指さすところを見る

そこには人工的に作られた道

少し奥に行けば、多少草が邪魔しているも階段らしきものがあり、さらにその先には古めかしい建物が見えた


「あれ、何かこの前とデジャブな気がするんだけど?」

「気のせいだ気のせい」

「とりあえず今日はこの場所をお借りしますか」

「ちっ」


どんなにぼろくても雨風を凌げるのならば文句はないということである

さっそくジープから降りて歩き出す

五分とかからず頂上に到着した三蔵一行は思わず言葉を失った

それもそのはずである

辛うじて寺院に見えるそれは……

建物を囲む塀は所々穴が空いており、唐草などの植物で緑一色

肝心な建物のほうもほんのちょっとの地震で倒壊してしまいそうなぐらい



「うわっ、いかにも何か出そーなんだけど……」

「何だ猿。怖いのか?」

「そんなんじゃねーってば」

「でも悟空の言うとおり確かに何か出そうですね」

「だな」

「ちょ、お前らが言うとマジな気がするから!」

「何だ。悟浄だって怖いんじゃん」

「ちげーよバーカ!」


本日何度目かの喧嘩を余所に八戒が大きな声でごめんくださーいと呼ぶ


「こんなところ誰も住んでないだろうが」

「一応念のためというやつです」


八戒自身こんなボロボロなところに誰も住んでいないだろうと思っていたが、礼儀というものがある

すると予想外にも返事がきた


「はーい、どなたでしょうか?」

「ぎゃー出たァァァァァァァ!!」


まさかの一声にお互い抱き合って声を上げる

顔面は吃驚するぐらいの青


「『出た』とはこれまた失礼な人がいたものですねえ」


腐りかけの中から間延びした声とともに現れたのはちゃんと足のついた人だった

若緑色の髪を後ろで二つ折りに止めた女性

彼女の登場に悟空悟浄だけでなく、三蔵と八戒も吃驚したようだ


「おや、珍しいですね。こんな辺境に人が来るなんて」

「えっと……できれば一晩の宿をお借りしたいのですが」

「こんなところでよろしければいくらでも。さあどうぞ」


人当たりのいい笑顔で三蔵たちを中へ促す

4人はお言葉に甘えて一晩泊ることにした


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