06



新たに双蓮と水櫁が加わり計六人となった一行は今日も西へ行く。

ブロロロロッと、ジープとスクーターが土煙を上げ、進む。


「今日もいい天気ですね」

「真昼間から酒とは呑気だなあ」


スクーターを運転しているのは双蓮

水櫁はその後ろにのんびり双蓮の言葉通り昼間から酒(マイボトル)を浴びるように飲んでいた。

八戒と同じくザルなのかいくら飲んでも呑まれない水櫁。

一方ジープはと言うと、


「あ、ちょいタンマ!! てめぇ今カードすり替えただろ!」


悟空がトランプ片手に声を荒げる。


「てねェよ! 目の錯覚じゃねーの?」


と、悟浄はシラを切るが、もちろん真偽のほどは分からない。

すると、ポーカーそっちのけで言い合いを始める。

それを横目で見ていた双蓮が、


「しかしまあ毎回毎回よく懲りずにやるよなあ」

「学習しないだけだ」


間髪入れずに三蔵が答える


「ああ……なーる」


蚊帳の外である二人こそ呑気である。

ところがそう呑気でいると……、


「あ、やりやがったなあ猿!」

「猿じゃねえし!」


いつの間にか取っ組み合いが始まっていた。


「クソエロ河童!」

「んだとォ!?」


それがジープの上でもお構いなし。

ところ構わず自分を忘れ、暴れまくる2人。

すると、バランスを崩した悟空が運転席の八戒のほうへ倒れ、ハンドルが、車体が傾く。


「あ、」


その先は言わずもがな――


ドボンッ! と、大きな水しぶきが上がった。


「あーあー落ちた。ぶふっ」

「こら、見てないで止めなさい」

「あ、そうだった」


双蓮はブレーキをかけ、スクーターを下りた。


「ぶはあっ!」

「冷てえ!」


空は快晴でポカポカと効果音が聞こえてきそうなぐらいだが、水の中はそうではないらしい。

悟空、悟浄、三蔵、八戒、ジープの順で顔を出す。


「うっわ、びしょ濡れじゃん」


「お気の毒に」と上辺だけの同情の言葉をかける双蓮。


「ったく、猿!! なんてことしてくれんだ!!」

「ちげえよ!! 悟浄の方から仕掛けてきたんだろ!?」

「元はといえば、お前がインチキだとか言い出すからだろうが!!」

「それをいうならインチキした悟浄が悪いじゃん!!」


川に落ちてなお一切の反省の色を見せない二人は再び不毛な争いを続ける。

が、


「死ね! このまま死ね!」


ついに痺れを切らした三蔵が二人の頭を掴んで沈める。

だが、それだけで死なないのはいつものこと。


「ホントガキだよね」


何て上から目線で呑気な事を言っていると、


「あ、ちょっと双蓮!! あれ!!」


急に真剣な顔つきで水櫁が上を指す。


「え、何?」


と、条件反射でその指差す先に視線をやると、


「えいっ」

「え、ちょ、ちょォォォォ!?」


なんて油断していたところ、水櫁に背中を思いっきり押され、そのまま川へ。

先ほどでもないが、ドッバーンと大きく水しぶきをあげて見事に双蓮も落ちた。


「いやあ、豪快に行きましたねえ! 素晴らしい飛び込みですよ、10点満点!」


満面の笑みで拍手を送る水櫁。


「……もっとガキがいた」


冷たさに震えているのか、怒りで震えているのか、たぶん両方。

笑い続ける水櫁に双蓮が何とか同じ目に合わそうとするも、彼女はそれを簡単に避け、それでも落とそうとする双蓮のいたちごっこがはじまった。

寒さと肌に張り付く服の不愉快さに三蔵と双蓮の怒りがひと段落したところで、ふと若い女性の笑い声が聞こえてきた。

全員が声のするほうを見るとそこには洗濯物かごを抱えた髪の長い女性がそこにいた。


「あ……ごめんなさい。あんまり楽しそうだから、つい……」


涙が出るほどおもしろかったのだろう。

うっすらと目に浮かんでいる。


「俺をこいつらと一緒にしないでくれ」

「もとはこいつのせいだ!」

「油断していたのは双蓮のほうですよ? 油断大敵」


まだやるのかァ? と双蓮が低い声で怒鳴ると水櫁は怖い怖いと全く怖くなさそうに口を閉じた。


「もしかして洗濯してらしたんですか? スミマセン、水汚しちゃって」


悟空たちが暴れまわったせいで水は砂を巻き上げ濁ってしまっている。

これでは洗濯ができない。


「それよりどーすんだよ。替えの服までずぶぬれじゃねえか」


水を吸った服はずっしりと重たい。

幸い双蓮の服は(水櫁の能力によって)無事だが、三蔵たちはジープごと落ちてしまったので替えの服も似たような感じである

すると、彼女はある提案をした。


「服を乾かすならウチの村まで来ませんか? 笑っちゃったお詫びに熱いお茶でも」

「それはいいですね! ここはお言葉に甘えましょうか」

「賛成ー!」

「だから一体誰のせいだと……」


未だに川に突き落とされたことを根に持っている双蓮を引きづりながら彼女の村におじゃますることになった。


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