Nowhere...?跡地 | ナノ






テニス日和


そして運命の放課後


「ねえ本当にやるの?」

「ここで投げ出せるわけないじゃん」

「そりゃそうだけど」


識が何を心配しているかというと

テニスコートを囲んでいる大量の女子たちのことである

某お金持ち学校ではないにしろ、かなりの人数がいる

識は一人、面倒くさいことにならないようにと祈るばかりだ


「おう来たな!」


どんと部室らしき建物の前に例の男子生徒がいた


「よう、わかめ頭」

「わかめじゃねえ! 切原赤也だ!」

「名前なんてどうでもいいんだよ」

「よくねえ!」

「そんなことよりさっさとやろうじゃないか」

「お前なんかコテンパにしてやるぜ!」


ラケットを有梨に向かって振りかざす赤也

その目は闘志で燃えている

対する有梨は自信満々の笑みを浮かべていた

さっそくコートに入る二人

ラケットはテニス部から借りた

するとどこかで聞いたことある声が識を呼び止めた


「こんにちは」

「あ、誰かと思えば朝の……幸村さんでしたっけ?」

「覚えていてくれて嬉しいよ」


その節はお世話になりましたとまた頭を下げた


「そういえばテニス部って言ってましたね」

「うん、これでも部長なんだ」

「……いいんですか、勝手に試合何かさせちゃって」

「いいよ、これも一つの経験だからね」


ふふふと余裕の笑みを浮かべる幸村に識は不安を隠せない


「精市」


幸村に続いて現れたのはノートを持ったおかっぱ頭の特徴の男子生徒


「誰だ?」

「朝言ってた子だよ」

「ああ、例の転校生か」

「……四条識と言います」


そう言って柳は持っていたノートにメモをとる

何が書かれているんだろうと興味を持ったが勝手に見ることは失礼に当たるのでスルーすることにした

なんやかんやしているといつの間にか試合は始まっていた


「おうっら!」


赤也のサーブが有梨に襲いかかる

しかし彼女も伊達にテニスをやっていない

軽々と彼のサーブを打ち返す


「あの子なかなかやるな」

「ええ。あれでも全国大会入賞者ですから」

「へえ! そうだったんだ。どおりで上手いはずだ」


試合は赤也のリードで進んでいく

赤也が有利だったはずが、後半になるといつの間にか有梨のリードに変わっていた


「決着付いたな」


柳が静かに言った

幸村と識もそうだね、そうですねと呟いた


「勝った……」


そう言って有梨はコートに倒れ込んだ

同じく赤也は負けた……と膝をついた


「クソなんで負けんだよ……」


今にも泣き出しそうな赤也に幸村はお疲れの意味を込めてタオルを頭にかけてあげた

圧勝とはいかなかったが、勝ちは勝ちだ


「勝ったよー」

「お疲れー」


識もあらかじめ買っておいたスポーツドリンクを有梨に渡した


「ちくしょー! 覚えてろよ鳥の巣頭!」

「誰が鳥の巣じゃゴラァ! わかめ頭の癖になまいきだ!」

「わかめじゃねえ! 切原赤也だっつてんだろ!」


最後まで小学生の口喧嘩をやめない二人であった

すると幸村がやってきた


「見事な試合だったよ」

「あざーっす」

「ねえねえ、ものは相談なんだけどうちのマネージャーしてみない?」

「マネージャー!?」


思わず声が揃った


「マネージャーはちょっと……ねえ?」

「そうだなー」

「そっか。それは残念だ」


しょんぼりする幸村に二人の心の中の天秤が揺れ動くもなんとか耐える


「あ、それじゃあ俺らはこれで」


これ以上心の天秤が揺れ動かないうちにさっさと二人は退散した







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