Nowhere...?跡地 | ナノ






喧嘩日和


ややあって昼休み

短い休み時間は珍しい転校生に興味津々な生徒からの質問攻めを受けた二人

おかげで休み時間なのに全くこれっぽっちも休めなかったようだ

さすがに昼休みはそれぞれの用事があるようで二人はようやく解放された


「あーだる」


机に突っ伏した有梨が呟いた

有梨の後ろの席が識の席になっている


「転校生っていうのも厄介なもんだね」

「……お腹減った」

「おや、有梨がお腹減るなんて珍しいこともあるんだね」

「俺だってお腹減ることはあるよー」

「それじゃあ購買でも行きますか」

「うーい」


と、いうことで売店に行くことにした

購買には色々なパンやおにぎりが売られていた


「どれもおいしそうだねー」

「程々にしておきなさいよ?」

「おばちゃーん、俺メロンパンひとつとカレーパンひとつね」

「悪いねえ、メロンパンもう売り切れなのよ」

「それは残念……。じゃあ代わりに焼きそばパンで」


賑わう購買のおばちゃんにお金を渡し、物を受け取る

識はチョココロネ一つに優雅にアップルティを頼んだ

さっそく教室に戻って食べようとしたところ、すぐ隣で声が聞こえた


「ええ!? 焼きそばパン売り切れた!?」

「おしいねえ。ついさっき売り切れたばかりなのよ」

「うわっ、マジでついてねえし!」


大げさに頭を抱える男子生徒


「……なんかやばくね?」

「いかにもとばっちりが飛んできそうね」

「さっさと行こうぜ」

「賛成」


そっとバレないように教室に戻ろうとするも……


「あ、あの子だよ。最後の買っていったの」


おばちゃん空気読んでェェェェ!

この時二人の心の声が重なった

しかし購買のおばさんを攻めてはいけない

決して他意があったわけではなく、親切心で教えてくれたのだ


「てめえか、人の昼飯とっていったの」


睨みつける男子生徒に有梨も負けじと睨み返した


「ああ? どれがお前のだ。パンなんて買ったもん勝ちに決まってんじゃん」

「うるせえ! って誰かと思えば転校生かよ」

「転校生だろうがなんだろうが早いもん勝ちだし」

「てめえ、それは立海テニス部二年エースの切原赤也ってわかって言ってんのか?」

「別にお前が誰だか知ったこっちゃないね。自分でエースとか普通言わないし」


どんどんヒートアップしていく喧嘩に識は他人のふりをすることに決め込んだ

わたしは関係ありませんよという顔だ


「でも売られた喧嘩は倍にして返す主義でね。買ってやるよその喧嘩!」

「望むところだ!」


ついに手が出るかと周りが息を飲んだ

その時有梨がこういった


「ただし条件がある」

「条件?」

「個人的には拳でっていうのもいいけど、流石に説教喰らいたくないし、そっちが二年エースならその実力で勝負だ」

「なるほどテニスで決着つけようってわけだな?」

「1ゲーム3セットマッチってのはどうだ」

「いいぜその条件」


結局今日の放課後テニスで決着をつけることになった

その後切原赤也はカレーパンとコロッケパンを抱えてどこかへ行ってしまった


「初日からやってくれるね……」

「俺じゃねえよ。あっちが悪い」

「五十歩百歩よ。あー面倒くさい」

「別にいいじゃん。俺の喧嘩なんだから」

「まあいいけどその代わり自分で尻拭いしなさいよ」

「りょーかい」


勝ち取った焼きそばパンを片手に二人も購買を後にした

ちなみに教室に帰ったあと有梨の前の席が彼の席だったことが発覚する

この有梨の決闘が二人の学校生活を変えることになるとは知らずに……







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