Nowhere...?跡地 | ナノ






跡部王国建国記念日


※いつも以上にキャラが崩壊しています

※あと何か無駄に長いです、過去最長です

※わりと本人は真面目に書いたつもりだったけど、そんなこともなかった

※ガッカリ感半端ない



Are You Ready?
















「うわ、すげえ……」

そう漏らしたのは誰か

目の前に広がるのは豪勢な料理の数々とシャンデリアなどの煌びやかな装飾たち

庶民派の立海テニス部のレギュラー陣は恐らく一生に一度あるかないかのパーティーに

参加していた


「さすが財閥の嫡男。誕生パーティーも半端じゃないな」


冷静に分析するのは柳

テレビで一度は見たことあるタレントや政治家などどこを見ても有名人ばかりだ


「うわっ、なんか俺、すっげえ場違いな気がするッス」


制服とはまた違った正装がさらにその気持ちを増幅させる

一部除き、皆その業界の人に見えるほど似合っている

現に何人か勘違いして話しかけてきたほど

ちなみに全員の礼服はわざわざ跡部がすべて手配してくれた


「さすがの赤也もそんなことを思うんだね」

「部長地味に酷いッスよ!」

「まあ大丈夫だよ。何てったってこっちには跡部直々の招待状があるんだから」


幸村が胸ポケットから赤い封蝋が目立つ招待状を見せる

そこには立海大附属中学テニス部様へと書かれていた


「ほらもっと肩の力抜いて」

「で、でも……」

「大丈夫。ほら、ブン太たちを見てごらん」


幸村に言われ、そういえばさっきから姿が見えない丸井を探すと、


「ジャッカル! これめっちゃうめえぞ!」

「わかった! わかったから! お前そんなにはしゃぐな! 恥ずかしいだろ!!」


目の前の料理を片っ端から手をつけていく丸井


「……俺、ある意味その神経尊敬するッスよ」

「ああ? 赤也、なんか言ったか?」

「いや何でもないッス」


多分、丸井は美味いものがあればそれでいいのだろう


「そういえばあいつらはどうしたんだ?」


和服には着慣れているが、このような洋服はそうでもない真田が珍しく落ち着きなさげに言った


「そういえばそうじゃのう」

「あとから来るって聞いてるけど」


当たりを見渡すが、同じく招待されているはず彼女らの姿は見えない

すると、入口のほうで「七森財閥のお嬢様がいらしたぞ!」という声が聞こえた

その声に一同振り向く

豪華な扉から現れたのは見たことのない少女だった

黒を基調としたふんわりとした丈の短いワンピースと同色のニーソから覗く絶対領域がはっきり言って何とも言えない色気が出ている

髪には真っ赤なバラの髪飾り、胸元にも同じ色のリボン

ヒールを履いているせいか、少し高い

そしてほんのり薄化粧をしていた

その場にいた誰もが「あいつ誰だ!?」と思うほど、別人のよう

馬子にも衣装という揶揄すら出ない


「おいマジかよ……」


さすがの切原もそう漏らさずにはいられなかった

はっきり言って美少女だと思う一同

一人の使用人の手を借りてゆっくりと優雅に階段を降りてくる姿はまさにお嬢様だ

まあ実際お嬢様なんだが、こうしてまざまざと現実を突きつけられる

「詐欺じゃろ」とこぼした仁王にこの時ばかりは誰も「お前が言うな」という突っ込みはなかった

そのまま幸村たちのもとへ


「どうもこんばんわ」


軽くドレスを摘んでお辞儀をする

咄嗟に対応できたのは紳士代表の柳生と柳、幸村の三人で、他の全員は唖然としていた

顎が外れるぐらい間抜けに口を開けている


「お、お前、マジで有梨なのか……?」


丸井が皆の心の声を代弁した


「……他の誰に見えます?」


不機嫌MAXの声だけはいつも通りだった

それだけが目の前の人物が有梨本人だということを証明してくれる


「いやあ、吃驚したよ。まさかこんなに変わるなんてね」

「先輩たちも随分様変わりしてますね」

「どう似合ってる?」

「まあ似合ってますよ」


事も無げに話す幸村だが、


「皆さんそんなにオレの格好可笑しいですか?」


相変わらず外野は口を開けたままだ

後ろの使用人が何か耳打ちに有梨は小さく舌打ちで返した

恐らく一人称を注意されたのだろう


「いや、よく似合ってるぜ!」

「綺麗だな」

「……あざっす」


丸井と柳の言葉に不本意ながら感謝の意を述べる

例えどんなに着飾ろうとも中身はそのままなことに一同安堵したのは内緒だ


「そういえば四条は来ないのか?」


ジャッカルが聞く

実は彼女のドレス姿を今か今かと期待に胸を膨らましている者が何名かいるのも内緒だ


「あー……えっとですね……」


バツの悪そうに視線をさまよわせる有梨

「来てないわけじゃないんですけど……」と曖昧な言葉をこぼす

その時、有梨の付き添い人の使用人が小さく声を殺して笑い始めた


「いやですね、みなさん。最初からここにいるじゃないですか」


馴染みのある声にまたしても全員が固まった

「ま、まさか」と言ったのは誰か


「えーあー……はい。声でわかったと思いますが、こいつが識っす」


有梨が一緒にいた使用人を指差す


「ええっ!?」


本日二度目のドッキリ


「どうも有梨お嬢様のお目付け役を仰せつかっております。四条識と申します。以後、お見知りおきを」


綺麗なお辞儀をする識

前髪はオールバックで肩につくぐらいの髪は小さく青いリボンで一つにまとめられ、眼

鏡はコンタクトにかわっている

服装も黒の燕尾服に緑の石が盛り込まれたループタイが妙に似合っていた

つまり識は完全なる男装

やせ型だが実は身長が170近くあったりして様になってるから困る


「いやあ、簡単な変装なんでばれるかなって思ってたんですけど、思いの外誰も気づきませんでしたね」

「そりゃあそうだろ。普通オレと同じようにドレスだと思うだろ。誰も男装してるなんてなあ……?」


割と乗り気なのか、楽しそうに笑う識とそれを見て溜息を漏らす有梨

きっと声を聞かなければ気づかなかっただろう


「……男装ですか」

「ちょっと意外だったなあ」

「読みが外れてしまった」

「……プリッ」


誰が期待していたかは言うまでもない

ちなみに有梨曰く、彼の兄が用意し、有梨自身もギリギリまで知らなかったという

有梨と気がしれており、変な輩に絡まれたとき咄嗟に動け、その他諸々の条件に当てはまったのが識だったというわけだ

識が引き受けた理由はなんだか楽しそうだし、ドレス着るよりは何倍もマシとのこと


「まあそういうわけですので接するときは配慮願います」


ウインクをする識に一同は黙って頷いた


「それじゃあちょっと挨拶回りがあるので。識、行くぞ」

「はいお嬢様」


識のお嬢様呼びにイラついているのか有梨は少し足音を鳴らして足早に立ち去っていく

識も幸村たちに一礼してから一歩遅れて彼女についていった





挨拶回りを終えて一息ついていると、


「こんばんは。お久しぶりやね」


近辺では聞きなれない大阪弁に振り返れば、忍足を筆頭にホスト部の異名を持つ氷帝テニス部レギュラー陣(跡部除く)がいた

だが、有梨は


「誰てめ?」


と素で言ってのけた

そこはお約束と言わんばかりに大阪人らしく見事にバランスを崩す忍足

さすがに可哀想だと思った識が耳打ちをする


「ああ、はいはい思い出した思い出した」

「クソクソ忘れるなよ! 一緒にテニスしたじゃねえか!!」

「コラ向日! 気持ちはわかるが、ここでそんな言葉使うなよ!」


宍戸の注意につい癖で言ってしまった向日は「あ、しまった!」とバツの悪そうな顔をした


「どうもこんばんは」


立海メンバーの時と同じようにお辞儀をした

彼らと違ってこういう場に慣れているのか、有梨の姿を見ても全員が動じることなく対応する


「さすが慣れてますねー」


「わかめたちとは大違いだ」と漏らすと全員が当然だというような顔をした


「それにしても有梨めっちゃきれEー!」


ぎゅーっと有梨に抱きついてきたのはもちろん芥川

いつもはだらしない印象を受ける彼だが、今回は髪の毛のハネは少なく、キリッとした美男子に見える


「ちょっ、苦しいです芥川先輩。ってか、締まってる締まってる死ぬぅ!!」


ギブギブギブと顔が青くなるのを見て樺地が芥川を無理やり引っペがした

識がさりげなく有梨の背中をさする


「それにしてもそういう格好するだけで随分印象変わるな」

「……そっくりそのまま返しますよ、すすろ先輩」

「なっ! 誰がすすろだ!」


宍戸の後ろにいた日吉と鳳が「その通りだ」と小さく吹き出した


「若、長太郎。お前ら明日の部活覚悟しろよ」


と、睨みをきかせるも


「下克上だ」

「大丈夫です!」


と、大して効果はなかった


「それで識ちゃんはどうしたん?」


控えていた本人は忍足の『ちゃん』付けにぞわっと鳥肌が立った

そんな識に気がついた有梨は心の中でご愁傷様と言った


「そういえばいませんね」


鳳がその高い身長を活かして辺りを見渡す

本当なら先ほど同様、「どっきり! 実はわたしです!」みたいな種明かしをするつもりだったが、識は自ら名乗り出ることなく沈黙を守ったままだ

それをすぐに悟った有梨が逆にフォローを入れる


「あいつなら来てませんよ」

「そうなん? てっきり一緒に来とるもんやと思っとったわ」

「オ、――自分は家を代表して来てるだけですから」

「ふうん?」


少し意味深な返事と視線に識はさっきとは違った意味の鳥肌を味わった

その時、会場に薄い闇が落ちた

それを合図に静かにクラシックが流れ、会場の中心ではそれに合わせて何組かの美男美女が踊り始める

恒例のダンスが始まった

全員の視線がそちらに向く中、識は有梨にしか聞こえない言葉で言った


「行きなさいよ」



識の視線の先には沢山の子女に囲まれた跡部

しかし有梨は何も返さない


「ほら」

「……」

「決めたんでしょ?」

「…………」

「よもやわたしの苦労を泡に返す気じゃないでしょうね?」


長い沈黙の後、有梨は何も言わずに歩き出した





本日の主役である跡部は困っていた

大変困っていた

というよりはうんざりしていた

誕生パーティーのフィナーレに踊ることになっている

その相手を決めなければならないのだが……


「(ああ……)」


一歩も動けないほど、異性に囲まれていた

学校にいる女子よりは断然品があるが、それでも跡部の目には全員同じにしか見えなかった

さてどうしたものかと考えあぐねいていると、


「景吾様」


凛とした、聞き覚えのある声にも関わらず、全く呼ばれ慣れてないそれに反応する

跡部の視線がある一点に留まった

それに気づいた周りもその跡を追う

全員の視線の先には、


「有梨……?」


輪から少し離れた位置に有梨がいた

周りがざわめく

数え切れない視線を無視して有梨は跡部へと歩き出した

彼女の無言の圧力に跡部を囲っていた娘たちは無意識のうちに道を開ける

過去に何度か見たことあるはずの彼女の姿に跡部は静かに息を飲んだ

有梨と跡部が向かい合い、右手を伸ばして言った


「Shall we dance?」


誘われる側には実に不適切な、だが彼女らしい挑発的な、そしてふてぶてしい笑みを浮かべる有梨

何が起こっているのか

言葉を失う跡部は有梨の遥か後ろで壁に寄りかかっているある人物が目に入った

その人物の笑みの意味を理解すると、


「(面白い)」


有梨の手を取り、


「Sure, I'd love to」


跪いて小さくくちづけを落とした

そしてそのまま手を引いて会場の中央に躍り出た

主役の登場に踊っていた彼らは静かにフェードアウトしていく


「どういう風の吹き回しだァ?」

「ああ?」


優雅にステップを踏みながら当人たちにしか聞こえない声量で言う


「お前から仕掛けてくるなんて明日は槍か?」

「黙れ泣きホクロ」


一瞬の隙をついて有梨はわざと跡部の足を踏んだ


「誕生日プレゼントだよ。プ、レ、ゼ、ン、ト」


今度は跡部が聞き返す番だった

それこそ「どういう風の吹き回しだ」と


「お前のことだから被らないようにするほうが難しいだろ? というか他人とかぶるなんてオレが嫌だ。で、そうならないためにはどうするか考えた結果がこれだったまで」

「……」

「なんだ? 不服かよ」

「……いや。まさかお前がこんなプレゼントを用意してくれてるなんてな」


そう言う跡部の頬はわずかに朱を帯びていた


「え、ちょっ! 柄にもなくお前が照れてどうする! ここは普通オレが照れるのがセオリーだろう!?」


といっても有梨は全く赤くないが


「うるせえ。俺様だって照れることはある」


ちょっと意外な一面を見た瞬間だった


「なあ」

「んだよ」

「最高のプレゼントをありがとう」


その美貌を遺憾無く発揮した笑顔に有梨も


「誕生日おめでとう」


珍しく穏やかな笑みで返した









-----あとがき-----
とりあえず私得をこれでもかと詰め込んだ話になりました
王道に見せかけて違うという

視覚的にイケメンな識と精神的にイケメンな有梨を書きたかっただけです
二人にはいい意味で化けて欲しかった
識は男装したら絶対儚い系イケメンだと思う
執事服とかさらりと着こなしてくれそう
逆を言えば胸がn(ぴちゅーん
決して識のドレス考えるのが面倒だったとかそんな理由じゃないから!!
有梨は正装したら絶対に詐欺なぐらい別人に見えると思う
お互い普段が普段なだけに識(みたいな大人びた子)のドレス姿と有梨(みたいな口悪い男勝りの子)の男装は割とよくあると思うんですけど、あえて逆にしたかった結果です
あとそんな二人を見て立海の皆さんには盛大にびっくりして欲しかったんだ
氷帝の皆さんもびっくりするけど、まあそんなもんだろみたいなあっさりした感じで

それと主人公が振り回される(照れる)んじゃなくて逆に相手が振り回されるのが書きたかった
跡部様のまともなデレ(本編は違うベクトルのデレ)とか貴重だと思う
有梨はそこまで跡部を嫌ってないと思います
うざいところはうざいだけでテニスの腕前とか云々ちゃんと認めてる感じ
本当は最後パートだけで十分なんだけど、こんな機会なんて本編じゃ滅多にお目にかかれないだろうから無理やり前二つにねじ込んだ
ねじ込んだ結果、メモ帳のサイズが10KBぐらいになってた
たぶん一番長い最長ですよ

いやー書いてて実に楽しかったです! まさに俺得!! 万歳ー!

服装にセンスの欠片もないのは通常運転
描写がこの上なく曖昧なのも通常運転
主役登場までクソ長いのも通常運転
もうこの話自体酷いのも通常運転

ちなみに着手し始めたのは二か月前(ただし二週間前まで放置)

いつも以上にノリと勢いだけで突っ切ったから色々と文章に違和感

あ、あと『!?』の方に裏話的なものも置いておくのでもしよかったら是非!!

そういうわけでこんなところまでご愛読ありがとうございました







「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -