Nowhere...?跡地 | ナノ






炎天下より


白一つ無い青の下、今日も立海テニス部はその名に恥じない練習に取り組んでいた

三強(主に柳)が立てた綿密なストレッチ、トレーニング、軽い打ち合いだけで午前は終わった


「今から一時間昼食休憩とする。各自水分補給を怠らないように」

「はいっ!」


そして太陽が真上に到達したのを境に、幸村が昼食休憩を命じる

レギュラー陣は特別に冷房が付いている部室へと足早に入っていく

柳もそれに続こうとしたが、「蓮二!」と幸村が彼の名を呼んだ


「どうした精市?」

「午後からの練習試合なんだけどさ」


手書きのトーナメント表を見ながら幸村があれこれと言う

それに対して柳もやっぱりここはこうした方がいいか、などと呟く

と、そこへ真田も加わり、さらに話は深度を増す

結局、トーナメント表を一から書き直して話は終わった


「じゃあ、トーナメントはこんな感じでいこうか」

「そうだな」


「二人共引き止めてごめんね」と言って幸村も部室へ

真田はもう少し打ってからにすると再びコートへ向かった

残された柳も幸村に続いて部室へ入ろうとした

その時、ふと誰かに見られているような、そんな視線を感じ、あたりを見渡す柳

しかしぐるりと見渡しても今ここにいるのは真田だけで、彼はずっとボールを追っている

気のせいだろうかと何気なく太陽を見たとき、視界の端、屋上に白くはためく何かが見えた

目を太陽からそちらへ移すと確かに白い何かをきた誰かがこちらを見ている

相手もこちらが見ていることに気がついたのか、ふっとその姿を隠した

柳はその人物が遠くながら誰かわかった気がした


「蓮二? どうかした?」

「ああ、ちょっとな。悪い精市、少し校舎のほうに私用を思い出した」

「私用? まあいいけど。ちゃんと時間見計らって昼食とれよ?」

「もちろんだ」


それだけ言うと、柳は校舎へ向かって歩き出した


がちゃりと重たい屋上へ通ずる扉を開けばより強い日差しが出迎えた

錆び付いた扉の音に、屋上にいた識が振り向いた

薄く笑みを浮かべ、「何しているんだ?」と識に近づいて柳が言った


「見てわかりませんか。片付けてるんです」


彼女の周りには色とりどりの絵の具が転がっていた

そしてその後ろにはキャンバス


「絵を描いていたのか?」

「ええ、まあ」


相変わらず無愛想に返事をする識

キャンバスにはここからの風景が描かれていた

眼下に雄大に広がる海と瑞々しい木々の緑、よく見れば端にテニスコートのような所にぽつぽつと黄色が埋め込まれていた

柳は絵については素人で、本当かどうか定かではないが、上手な部類に入ると思った


「ん?」


ふと一つあることに気がついた

明度が全体的に低い

こんなにも晴れ晴れとした空だというのに絵の中の風景はどこか暗い印象を与える

と、見ているとキャンバスと柳の間に識が割り込んできた


「あんまりジロジロ見ないでください」


先ほどの無愛想とは違い、どこかいらだちが見え隠れしている


「悪い。すまなかった」


キャンバスから離れ、片付けをする識からも少し距離を置く

今更になって屋上から見えた白いものは彼女の美術用の白衣だった


「ずっとここで描いていたのか?」

「はい。有梨の補習の間にちまちまと」

「そうか」

「ところで柳さん、一つ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「どうしてまたここに?」


ぱちんと絵の具を全てしまい終えた識が聞く


「屋上からお前の姿が見えたからだ」

「は?」


柳の言葉に識は真顔で彼の方を見た


「それ正気で言ってますか?」

「もちろん」


すると彼女は「ついに暑さで頭やられましたか?」と言いながらも少し笑っていた







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