Nowhere...?跡地 | ナノ






終業式


夏休み


「えー、明日から皆さんが待ちに待った夏休みですが――」


全校生徒が集まる体育館では人口密度が半端ではない

ついこの間、冷房の使いすぎで学校全体のブレーカーが落ちた

普通なら有り得ない出来事なのだが、起きてしまったものはどうしようもない

結局修理は夏休みが始まる明日に治るそうだ

今しゃべっている校長の話を聞く生徒などほとんどいない

大半がその暑さで立ったまま半分死んでいた


「あー死ぬぅ……」

「いくらなんでもこの暑さは異常……」


もちろん有梨と識も例外なく半分死んでいた

そよ風一つ入らない体育館はまさに天然のサウナだ


「お前ら情けねえな」

「うるせえ」

「まあ伊達に炎天下の中テニスしてねえからな」


見事なドヤ顔の切原を殴りたい有梨だったが、暑さのせいか殴る気にもなれなかった


「うるさい黙れわかめ。さっさと干からびて乾燥わかめになれ」


有梨の口からかと思ったらまさかの識からでその言葉には熱気よりも激しい殺気がこもっていた

あまりの迫力にまったく関係のない有梨も震え上がった

それから校長の話が終わるまで三人は誰ひとりしゃべることはなかった


「あーやっと解放されたー」

「……ホントな」


集会が終わるのと同時に識の機嫌も元に戻り、発せられた不機嫌オーラからも解放された

クラスも学年もバラバラに体育館から雪崩のように生徒が出て行く

識と有梨はその人ごみが嫌なためあえて体育館の中で人が引いていくのを見ていた


「やあ」

「あ、幸村さん」


待っている間声をかけてきたのは幸村と


「ついでにサナダムシ副部長と柳先輩じゃないっすか」


後ろには真田と柳の三強がいた


「おい、今サナダムシとか聞こえたが」

「気のせいじゃないっすか。サナダムシ先輩」

「いやいやお前、今絶対俺の名前にムシつけただろう」

「そんなことないっすって。被害妄想っすよ、ムシ先輩」

「もはや俺の名前すら――」

「真田、うるさいからちょっと黙ってくれる? 有梨も」


なかなか本題に入れない幸村の苛立ちが募り、ついに実力行使にでた

色々なものを含んだ笑顔に有梨はもちろん鬼の副部長の異名を持つ真田までも静かになった

幸村はため息を一つついたところで本題に入った


「これよかったら来てよ」


そう言って幸村が差し出したのは何かのチケットだった

『全国中学生テニス選手権大会』と書かれていた


「これって」


と有梨


「もしかして」


と識


「そう、全国大会の観戦チケット」


と幸村が言った


「え、これってもうすでに完売してるやつでは?」


識の言うとおり全国大会の観戦チケットはすでに完売している

競争率もかなりのものだったとか


「ああ、そうだ。だが前の合宿といい、先日の練習試合といいマネージャーとして手伝ってくれた礼だ」


柳がご丁寧に教えてくれた


「ほおー」


有梨は物珍しそうに上に掲げてじっくりと見る


「よかったら来てよ。少しでも人が多いほうが盛り上がるし」

「どうする有梨?」

「まあ今の中学生がどの程度か知るいい機会ではある」

「何よそのかなり上から目線……」

「ようするに時間が合えばいきますよ」

「それじゃあ楽しみにしてるよ」







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