Nowhere...?跡地 | ナノ






異変


最近有梨の様子がおかしい

どこが? と聞かれれば具体例は上げれないが、どこか変なのだ

強いて言うならわたしにすら壁を作っていること

どうしてわかる? と聞かれればそれは長年の付き合いからくる直感的なもの

伊達に小学生からこの異端児と付き合っていない

とにかく変なのだ


「――識、識」


ふいに名前を呼ばれ現実に引き戻された

有梨の声と周りの雑音が入ってきた

今日はテニス部とではなく、二人きりで教室で昼ごはんをとっていた


「なに? どうかした?」

「いや別に……。さっきから箸止まってるけど」


箸には白ご飯がちょこんと乗っているが、手は机についたままだ


「そういう有梨こそ、さっきから量減ってないと思うけど」


気がつかれたくない

だから話題をそらすように言った


「実は授業中、グミ食べててあんま腹減ってない」


嘘だ

確信を持って嘘だと言える

だって今日バッグに入れてたのポッキーだったじゃない

仮にバッグに入っていたとしても有梨はあまりグミを好んで食べない

だが、わたしはあえて何も言わない


「授業中っていうか、あんたの場合サボり中でしょ」

「そうとも言う」

「馬ー鹿」


一緒に吹き出した

例えどこかおかしくてもこのやり取りは変わらない

変わらない距離

一番気楽な距離だった

離れすぎず近すぎずの


「ところで今日何曜日だっけ?」

「今日はフライデーナイトフィーバーだぜ」

「つまり金曜日ね」


おかずのウインナーを口へ運ぶ

有梨も卵巻きをぶすりと一突きしてそのまま口へ


「金曜ってことは今日も帰り遅い?」

「おう、適当に食べてくるからご飯はいいや」


毎週月と金の帰りは必ずある場所によってから帰ってくる

ある場所というのは病院だ

別に有梨が特別病気を抱えていたり、怪我をしているわけではない

弟の見舞いだ

そう有梨には弟がいる

それもかなり病弱な

まるで何かにとりつかれたように見舞いに行く姿は心配するほど

それでも帰ってきた有梨の顔を見るといつになく晴れた顔をしているから何も言わない

ところが最近は帰ってきてもあまり浮かない顔をしている


「それじゃああんたの分いらないね」

「おう」


空になった弁当箱に蓋をした

まさかわたしに気づかれてないと思ってる?







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