Nowhere...?跡地 | ナノ






練習試合F


午後、ほとんど試合が終わってしまった彼らは勝ち上がったものの試合を見るなり、めったにない交流の場を利用して個人的に試合をしていた

その中には有梨の姿もあり、終わった頃にはただ息しかしていない屍状態だった

ぐったりとベンチを占領する有梨

ふいに額に冷たいものを感じた


「お疲れ様」


識が気を利かせてタオルを冷やしてくれていたらしい


「あーありがとう」


ひんやりと気持ちいい


「有梨だいじょーぶー?」


心配した芥川が寄ってきた

具合悪そうな有梨を見て酷く心配そうな顔をしている


「まあ、このまま安静にしてれば大丈夫っすよ」

「有梨がそう言うんならいいけどー」


すると遠くで誰かが芥川を呼ぶ声がした

それに応えるようにはーいと声を投げかけると、お大事にという言葉を残してその場を去った

芥川に続いて今度は識が呼ばれた

識もまた芥川のように返事をする


「わたしも呼ばれたから行くね」

「お前も気をつけろよ」

「はいはい」


一人になった有梨はそっとタオルをずらし、空を見上げる

青空が視界いっぱいに広がっている

清々しい程の青

肌を突き刺すような日差しに夏の訪れを感じた

不意に視界が薄暗くなった


「大丈夫か」


今度は跡部の顔がドアップで映った


「ちょっ!」


とっさに右手が動いた

パンっと乾いた音があたりに響く

幸い、周りには聞こえなかったようで、皆思い思いに動いている


「あ、悪い」

「相変わらず強烈だな……」


ひりひりと赤く染まる頬を抑えながら跡部は言った

それでも絵になるのが跡部である


「大丈夫か?」

「あ、ああ。ちょっと動きすぎただけ」


心底心配する跡部に午前の性格が破綻した彼はそこにはいなかった

有梨は起き上がり、跡部はそのまま隣に座る


「あ、これ使えよ」


そう言って有梨は額に乗せていたタオルを引っぱたいてしまった頬に当てるように渡す


「これぐらいなんともねえよ」


なんて言ってるが頬には季節はずれの紅葉ができている

柄にもなく少しだけ申し訳ない気持ちになった


「で、なんの用だよ」

「心配しちゃ悪いか」

「……別に」


本当に午前の跡部はどこに行ったのだろうか、むしろ気持ち悪ささえ感じる有梨


「テニス、上手くなったな」

「ったり前だろ。あの頃とは比べ物になんねえぞ」


何だか馬鹿にされたようで、思わず挑発するような物言いになる


「なら今度は俺と勝負だな」

「げ、もう勘弁してくれ……」

「いいじゃねえか。芥川たちとやって俺とはできねえってか?」

「軽く打ち合うぐらいならいいけど」

「言ったな?」

「ただし今度な」

「ああ、さすがに今のお前に今からやろうぜとは言わねえよ」

「なんだ、ついに頭を熱にやられたか?」


あまりの優しさに心の中に止めとくつもりだったが、ぽろりと出てしまった


「なあに、押してダメなら引いてみろってやつだよ」

「結局そういう目的かい!」







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