練習試合A ネットをはさんでお互い向き合う 「紹介しよう。うちのマネ――」 幸村が有梨たちを紹介しようとすると 「有梨! 有梨じゃないか!」 右泣きボクロが特徴の男子生徒が一歩前に出た 「げ、やっぱいやがったか!」 今までない嫌な顔をする有梨 後ろで赤也がうわ、ひでえ顔と突っ込んだ 対する男子生徒は嬉々としている 「ふっ、こんなところにいるとはやはり運命とは怖いものだな」 「オレはこんな運命さっさと滅べばいい」 前髪を払い、やけにキザったらしいセリフを有梨は瞬時に一刀両断 「んだよ、二年ぶりに会ったのにつれねえな」 「一体いつどこで誰にどうやってお前にデレたことがある」 「別に俺は今デレてもいいんだぜ?」 「イミフ乙」 このままだと夕方まで続きそうだ 言葉のキャッチボールが成り立ってない端で立海メンバーが識にどういうわけか聞く 「おい何であのチビが氷帝の跡部と知り合いなんだよ」 「色々とあるのよ」 「ほう。その色々と詳しく聞きたいものだな」 興味津々(特に柳が)なメンバーに識が有梨に聞こえないように小声で説明する 「本当かどうかわかりませんけどいいですか?」 「早くしろよ。有梨に気づかれちまうだろぃ」 「有梨が財閥の娘ってことはご存じですよね」 「人は見かけによらないよね」 幸村がさらりと辛辣なことを言う 「で、小学六年だったと思いますが、父親と一緒にあるパーティに着いっていったときたまたま跡部さんを紹介されたんです。そういう派手な場所が嫌いな有梨は当然機嫌悪くて、あの跡部財閥の跡継ぎである跡部さんにかなーり失礼な態度をとったらしいですよ」 「それのどこが跡部に気に入られるんだ」 気が付けば相手校も耳を澄ませていた 「わかりませんか? たとえ子供でも常日頃機嫌を伺われたり媚びられたりする彼にとって有梨の態度はきっと新鮮というか初めてだったと思うんです。もちろん有梨の父親は必死に謝りましたが、有梨は頑なに態度を変えようとしませんでした。それがまた跡部さんの慣れてないツボを押したんでしょうね。それ以来、跡部さんに気に入られたようですね」 本当に人づてに聞いた話なので確証はありませんけどね、と最後に付け足した 話し終わった頃、ついに有梨の我慢の限界が来たようで、 「しつこいんだよこのナルシスト野郎!」 有梨が全力で跡部の顔をグーでなぐった 「うわあ……」 「グーパンとか容赦なさすぎやろ……」 深い赤毛のおかっぱの男子と青い髪でメガネの男子が痛々しそうに言った 取り敢えず一段落(?)ついたところで幸村が仕切り直す 「今日一日限定だけど、うちのマネージャーをしてくれる」 「二年の四条識です」 「……同じく七森有梨っす」 識は丁寧に頭を下げるは有梨は軽く頭を前に出すだけだった 今度は有梨たちに相手を紹介する 「対戦相手の氷帝学園だよ」 「部長の跡部だ。将来有梨の夫となる男だ」 「ふさけんな。お前の頭はお花畑ですか。ああ?」 「まあまあ二人とも落ち着けや。今はそういうときやないやろ」 関西弁の彼が跡部、識が有梨を押さえる なんとか跡部を押さえ、下の自己紹介路線にもどった ガーッと自己紹介されるが、 全然覚えられねえ! というのが二人の感想で、見事シンクロ とりあえず把握したふりをすることにした |