Nowhere...?跡地 | ナノ






いたずら


本格的に夏が到来した今日この頃

学校もようやくクーラーを付け始め、授業がだいぶ快適になった

その一方でテニス部の練習は激化する

もちろんその分体力が奪われるのも当然であって、家に帰って休むだけでは足りなくなる

それはつまり――


「Zzz……Zzz……」


授業中堂々と寝る回数も増えることを指す


「まーたわかめ寝てるよ」


有梨が先生に聞こえない程度に識に言った


「あんたもさっきまで寝てたでしょうが」


人のこと言えないでしょとさらに付け足す

かれこれ授業の半分以上寝ているが、今のところまだ先生に見つかっていない

いや、気づいているだけで面倒だからスルーしているのかもしれないが


「まあ大方テニス部の練習量が増えただけでしょ」

「そっかーもうすぐ大会だもんなあ」

「そのまま寝かせておきなさいよ」


シャーペンをくるくると遊ぶ有梨に対して識は真面目にそれを動かし、板書する


「あ、ねえ。ちょっと大きめの付箋持ってね?」

「あーごめん。いまちょうどきらしてる」

「じゃあテープみたいなやつない?」

「あるけど?」

「貸して」


机の中からハサミやら糊が入った別のケースのチャックを開け、セロハンテープだけ取り出す

そして先生の隙をついて有梨に渡した

それを受け取ると有梨はノートの端をなるべく音を立てないように破り、何か書く

あとはセロハンテープをくっつけてそっと赤也の背中に貼り付けた


「どうよ」


首だけ#香織#の方に向ける

その顔は清々しいぐらいのドヤ顔だった


「ちょ、あんた何書いて……」


思わず吹き出しそうになるのを識は押し殺す

その時間終始、識はそれが視界に入るたび笑いをこらえるのに必死だった


「七森てめえ何してくれたんだよ!」


昼休み

今日も二人で食べていたところずかずかと赤也が割り込んできた

突きつけたのは先ほどの時間、有梨が赤也に貼り付けたもの


「何って、親切だろ?」

「どこが親切だよ! 100%ただの嫌がらせじゃねえか!」


バンッと赤也が机を叩く

一瞬、教室が静まり返ったが、ああまたあの二人かと慣れた様子でざわめきがもどる


「まあまあ落ち着けよ」

「お前のせいで俺がどんなに怒られたことか!」


どうやら今までずっと先生の説教をくらっていたようだ


「わかめくんの言いたいこともわかるけど、とりあえず静かにしてくれない?」

「四条お前も何でこいつを止めなかったんだ!」

「部活が大変なのはわかる。だけど授業中寝るのはあまり褒められたことではないよね。まあ部活があろうがなかろうがいつも寝てるみたいだけど。ある意味悪戯されても文句はいえないんじゃない?」


識に正論を言われ、赤也は口を閉ざさず負えなかった


「もちろん普通にサボってる有梨も充分悪戯されても文句は言えないと思うけど」

「お前はどっちの味方だよ!」

「あくまでわたしは中立国」


結局狸の寝入りとなってしまった






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