Nowhere...?跡地 | ナノ






球技大会A


球技大会当日

クラス全体が一丸となって優勝を目指す中識は不真面目そうにあくびをした


「あー眠い」

「あーだるいー」

「お前ら本当やる気ないな!」

「わかめのくせに生意気だー」

「うるせえ! てめえはずっと黙ってろ!」

「もうこのやり取り飽きたからやめてくんない?」


有無を言わせない無言の威圧で二人を沈める


「あ、わたし一回戦すぐだからもう行くわ」

「おーいってらっしゃいー。俺も行くかなあ」


マイラケットを担いで有梨もテニスコートへ急いだ



案の定識は一回戦敗退

ボロ負けだったが本人は悔しくともなんともなかった

むしろ解放されて嬉しそうである


「いやー大したことしてないけど終わった終わった」


普通なら他の応援へいくところだが、識は屋上へ向かっていた

扉を開ければ心地よい風が吹く

球技大会が終わるまでずっと昼寝をするつもりだった


「なんじゃ、四条じゃなか」

「げ、仁王さん……」


薄々気がついてはいたが、やっぱり仁王がいた


「もう終わったんか?」

「ええ。まあ終わったというより終わらせたっていうほうが正しいですけど」

「お前さんらしいのう」

「そういう仁王さんは終わったんですか?」

「いんや、今から」

「バスケですか?」

「ほうじゃ」


ずっと立っているのもなんなので仁王の隣を拝借

するとポケットからシャボン玉セットを取り出した


「吹くか?」

「誰も吹いてないなら」


そういうとパックから未使用のストローをくれた

二人仲良く青空にシャボン玉を浮かべていく


「何か童心に戻ったみたいで楽しいなあ」

「じゃろ?」


時間を忘れ、ただただシャボン玉を吹いた

大きいのや小さいの二つくっついたやつが空に昇っていく

ぼーと昇っていくシャボン玉を見つめていると、屋上の扉が勢い良く開いた

現れたのは仁王と同じクラスの丸井だ


「仁王!」

「なんじゃ?」

「なんじゃ? じゃない! お前次出番だぞ!」

「もうそんな時間かのぅ?」

「そうだよ。全く手間かけさせやがって!」

「ほいじゃあ俺は行くわ」

「頑張ってきてくださいね」

「おう」


そう言って仁王は丸井と一緒に屋上を出た

誰もいない屋上に一人取り残された

やっぱりやることはないので一人ぷかぷかとシャボン玉を吹き続ける


「今日も平和だなあ」


面倒な授業もないし、久しぶりに羽を伸ばす識であった

また屋上に新たな訪問者が現れた


「やあ」


幸村だった


「さっき仁王と丸井とすれ違ってね。君がここにいるって聞いたから」

「あ、そうですか」


識はまだシャボン玉を吹くのをやめない

幸村はそんな彼女の隣に腰を下ろした


「楽しい?」

「はい。たまにはこういうのもいいかなあと」


二人のあいだに沈黙が降りる

しかしすぐに幸村が喋り出した


「あのさ、この前はごめん」

「この前って?」

「ほら、ファンクラブの子達のことだよ」

「なんだ、まだ引きずってたんですか?」

「酷い言い方だね」

「あの話はもう済んだじゃありませんか」

「俺としてはまだ済んでないよ」

「ねちねち引きずるとモテませんよ」

「大丈夫、十分モテてるから」


それ自分でいいますかと突っ込んだ

事実だもんと言い返す幸村はどこか可愛らしい


「あの時止めてくれたのは助かりましたけどね」


もしあの時幸村が彼女の名を呼ばなかったら今頃自分は退学処分されるところだった

ハテナを浮かべる幸村になんでもないですと言った


「彼女同じクラスで根は優しい子なんだよ」

「まあ好きな人がどこの馬の骨とも知らない輩にとられれば誰だって怒りますからね」

「あ、もしかしてそういう経験あったの?」


と、聞けば間髪いれずに、しかもあからさまにいやそうな顔をして否定された


「まあ君が気にしてないならいいや」

「そうですか」

「ところで話変わるけど名前で呼んでいい?」


今度は識が頭にハテナを浮かべる番だった


「なんでですか?」

「いやなんとなく。いつまでも苗字呼びって何かよそよそしいしさ」

「別にいいですけど。たぶんもう関わることないと思いますけど」

「そんな寂しいこというかなあ」


事実わたしはあまり関わりたくないですけどねというのは心の奥底に閉まった


「識」

「なんですか」

「……呼んでみただけだよ」


子供っぽい笑みを浮かべる幸村に識は首をかしげた


「意味がわからないですね」


今日はやけに雲がゆっくり流れていく







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