Nowhere...?跡地 | ナノ






感謝


「今日は久しぶりに部活でもいこうかな」

「識部活なんて入ってたっけ?」

「一応美術部ですけど」

「あーそういえばそうだったねー」


有梨は購買で買ってきたチョココロネにかぶりついた


「でもいつも家で描いてるじゃん」

「今度総文(総合文化祭)あるから強制的に出品しなきゃいけないんだよね」

「あ、なーる」

「そういうことだから今日は一緒に帰れない」

「了解〜」


時は過ぎ、放課後

有梨と別れた#香織#は美術室へ向かう

美術室には数少ない美術部員が汗水流して自分の作品に打ち込んだ

そんな中を邪魔しないように識は自分のキャンバスを引っ張り出し、ある程度離れたところで美術道具を広げた

それから野球部や吹奏楽の音をかき消すように音楽プレイヤーから雨音だけ永遠となる続けるようにセット

あとは作品に集中するだけ

――――――

――――

――


気が付けば美術室にいるのはもう識だけになっていた

作品に夢中になれば周りを忘れることは多々あることで、今日はたまたま識だったというわけで

時計を見れば下校時間ギリギリだ

手早く道具を洗い、まだ塗りたてのキャンバスをどこかについてしまわないように慎重に片付けた

あとは最後の人が鍵を閉める決まりになっているため、一番扉に近い作業台の上にある鍵を手に取り閉め切った

鍵とタグとを繋ぐリングを指でくるくると器用に回転しながら鍵を職員室に返しに行く

その途中、意外な人とであった


「む、お前は」

「あ、誰かと思えば真田さんじゃないですか」


廊下でばったりあったのはテニス部の副部長を勤めている真田だった

部活終わりのようで肩にはテニスラケットがかかっている


「こんな遅くまで部活か?」

「ええ。提出期限が近いので。真田さんはどうして校舎に?」


外にあるはずのテニスコートからならすぐに帰れるのになぜわざわざ校舎にいるのか


「風紀委員の見回りだ」

「なるほど。それはご苦労様です」


ぺこりと一礼すれば、うむそちらもご苦労だったと礼で返してくれた


「職員室か?」

「ええ。真田さんも?」

「そうだ」


どうやら行く先は一緒なようで、当然行く道も一緒である

会話はそれっきりでどことなく気まずい空気が流れる

だが、識はさして気にした様子はない

むしろ真田の方がこのシチュレーションに戸惑っているような


「こ、この間は助かった。感謝する」


突然のことで何のことだが、わからなかったが、テニス部といえば合宿があったなと思い出した


「おかげで練習に専念することができた」

「いえいえ、結構楽しかったですし、うちの有梨がお世話になったようですしお互い様です」

「そう言ってくれると助かる」


真田がもう一度頭を下げた


「見た目通り律儀な人なんですね」

「周りからは古臭いなど言われるが」

「……まあ個性として受け止めればいいと思いますよ」

「む、むう……」


閑散とした廊下にすれ違う生徒は誰もいない

話し込んでいると気が付けばあっという間に職員室についていた

識はさっさと鍵を返したあと、風紀委員の先生を待っている真田に一足先に失礼しますといって職員室を出た







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