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さかのぼること半時間前
めずらしいことに今日は塾がなく、勝呂と一緒に帰る約束をしていた。
あわよくば寮でゆっくりできたらな、

なんて。



HRが終わり勝呂を待っていると、女の子の小さい歓声とともに雪男が教室へやってきた。

「兄さん、

任務で遠出することになったから、今日は寮に帰れそうにないんだ。」



わかったと返事をしてから差し出されたのは今朝、雪男に渡した弁当。
相変わらずとても美味しかったよと微笑み、じゃあ行ってきますと言って教室を出て行った。
いつも美味しかったと返してくれるが、なんとなく今日は一段と嬉しい。


勝呂と一緒に帰れるから舞い上がってるのかもしれない、と顔をぺしんと軽く叩く。
しかし、にやにや顔はなかなか引っ込んでくれない。


1人でにまにましていると、急に頭上から声が降ってきた。
あまりの唐突さに驚きを隠し切れず、うわあ、と声を上げてしまう。
ぱっと顔を上げると、そこには勝呂が立っていた。

「びっくりさせんなよ勝呂。いつからいたんだ?」

「ちょい前、くらい」


へーそっかそっかとまだにやける顔で返す。
勝呂が少しだけ顔をしかめた。


不思議に思いながらも、まあいつも顔こえーもんなと自分を納得させる。

しかしそれもつかの間、明らかに不機嫌そうな声色で「弁当作ってやってんのか」
と問いかけられた。
自然に頬の筋肉が緩むのを感じながら、脳天気に答えた。

「あーそうなんだよ。雪男が材料費出してさ。」

「そんで、うまかったて言うてもろてそないに嬉しそうなんか」


「うん、やっぱ自分の作った料理を美味しいって言ってもらうのってすげーいいよな」


勝呂の眉間の皺が深くなるのも気づかずに、燐はカラカラと笑う。


「あーあー、ほうかほうか。幸せそうで何よりやわ。あん人にはかなんなあ…!」

ばん、と大きな音を立ててジュースが机の上に置かれ、そのまま勝呂は早足で
教室を出て行った。



ぽかんと彼の姿が消えていったドアを眺め、まだ教室に残る生徒の視線とこの状況に少し、いたたまれない気持ちになる。

頭の上に浮かぶのは疑問符ばかりだ。



そして、今にいたるのである。
なぜ勝呂が怒ったのか分からない燐は、少しだけ腹が立ってきた。「くそ、意味わっかんね」とひとりごち、窓の外を見る。
そこには、さっきまで目の前にあったトサカ頭があった。少し涙が見えそうになるのを我慢して、燐は走り出した。

なんかよく分からねえけどこの際しょうがない、謝ろう。
頭の中で仲直りのシュミレーションをして、勝呂へと駆け寄る。



第一声は、ゴメンナサイ。











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