「好き」よりもっと
すきで好きでスキで、大好きで。
でもどんなに声に出したってそれを伝えたって胸のむずがゆさは増すばかり。
「君以上には出会えないだろう」
「何よりもかえ難い」
「君のためなら死ねる」
「世界を敵にまわしても」
「世界が輝いて見えるよ」
某検索サイトで愛の言葉って探すとこんなかんじ。
確かに勝呂以上に好きになれる人は見つかる気がしないし、俺の視界は鮮やかでこれはきっと勝呂への想いのせい。
でも違うんだ。きゅうきゅう胸が締め付けられるのが緩まることは無いし、まだまだ言葉が足りない。
むしろ前よりさらに心臓はどきどき波打っている気さえする。
どうすれば、どうすればこの苦しさを吐き出せるんだろ?
「勝呂、すきだ」
「知っとる」
「すきだ」
「俺もやで」
「大好き」
「ああ、」
「愛してる」
「…奥村、こないだからどないしてん」
「好きだ好きだ好きだ!」
どうすればいいか分かんねえんだよ
ただ勝呂に会ったら息がつまって、勝呂のこと考えるだけで涙で滲みそうになるし誰かと話してる時に勝呂の名前が出たら会話は上の空だ。
この気持ちを全部伝えたいんだ。
そうやなあじゃあ、とゆっくり差し出される厚みのある手にどきりとした。ぎゅっと指と指を確かめるように絡められ、急速に熱が顔へ集まる。
「俺かて奥村を好きや。好きで好きでしゃーない。いっつもこうしてたい。」
きゅう。
細胞が全部真ん中に集まってんじゃねえのってくらい、心臓のあたりが痛い。ぞわぞわと体中が痺れた。
「俺は、言葉には限界があると思てんねん」
「限界?」
「どんなに好きやて言うても、好きをまるごとあげるんはでけへん。でもな、」
ぎゅっ。
「こおやって抱きしめたら、なんか伝わる気がしぃひんか?」
ちゅ。
「こおやったら、もやもやしてたんがスッキリする気、せんか?」
どっかで聞いたことあるような話やけどなと言って笑った勝呂を、心底男前だと思った。かなわねえ。
でも。
「ちょ…待って、前よりもっとどうすればいいか分かんね…」
どしてや、と聞く勝呂に混乱しながらこたえる。
「だって、だって前よりもっと好きだっ」
ぎゅうぎゅう抱きしめてみるけれど体も頭も痺れたまま。まだ足りない。
「どんだけかわええねん…」
伝える新しい方法は学んだけど、俺にとっては逆効果みたいだ。
気持ちは風船みたいに膨らんでいくばかりで、解決への見通しはまだ立っていない。