ふたり暮らし


(大学生パラレル)



一緒に住もう
そう言ってきたのは勝呂で、迷うことなくそれを承諾したのは俺。
今までだって毎日のようにどちらかの家で寝泊まりしていたしなんの問題もない。

ダブルベッドがいい
そう言い出したのは俺。
部屋が狭くなると良い反応を示さなかった勝呂も渋々同意してくれて気分がいいんだ。

「今日部屋探し行こう!」
「はあ?そな急がんでも…」
「いーや駄目だ今日行くんだ!」

ぶうぶうと少し拗ねたように言うと「じゃあ、はよメシ食うてまうで」と困ったように笑った。すぐ折れてくれる勝呂は俺にものすごく甘いんだと思う。分かってるけど許されるわがままが心地よく感じる。

今日はあといくつわがままを聞いてくれるのかとわくわくしながら、朝食を食べて必要な物を書き出し、物件探しへと出かける準備をした。



ぎゅうぎゅうと詰め込まれた電車の中。
どうしてこんなに楽しい気分の時に限って人が多いのだろうかとイライラしながら横を見ると、勝呂もまた人の熱気に眉をひそめていた。
「今日はやけに人が多いな」
「ああ、時間ずらした意味あらへん」

あちーなーとパタパタ手で首もとをあおいでみても疲れるだけだ。
だるい体を壁に預けてぼーっとしていると、勝呂がふと思い出したようにひそひそとこぼした。

「そういえばな、痴漢とかしてたら一発で分かると思ってたんやけど」

「こんくらい混んでたら分からへんわなあ…」

その内容に若干驚きながらもすでに口を開くのもめんどうになっている。
でも確かに手元なんて見ないし見れない状態じゃ痴漢しててもバレないかもしれない。
心なしかにやにやしている勝呂にまさか、と嫌な考えが頭をかすめたが、意外なほどに常識人なこいつのことだいかがわしいことなんてするはずがないきっと。

「ぅおっ!?」

自分よりも体温の高い手がぎゅっと俺の手を握り、急な出来事に間の抜けた声を出してしまった。

「人前で手をつなぐのすらできひんからなあ」
「いや見えねーかもだけどよ、も…もし見られたらどうすんだよ」
「見えへんて」
「わかんねえだろ!」
「心配ない。絶対見えんから安心せえ」

どこからそんな自信が出てくんだよと言いたかったが、さっきまでの苛立ちなんて吹っ飛んでたことに気づいた。
汗ばんで気持ち悪いはずの手のひらさえ愛しい。
ぎゅっと手を握り返して勝呂を見ると目があって、大丈夫やからと耳元で囁かれ、顔に熱が集まるのを感じた。


目的地まであと2駅。
ほんの数分前まで早く着けと思ってたのに、今は着かないで欲しいと思っている。


いやでもやっぱり、これから始まるふたり暮らしの計画を立てに行くのはとても楽しみだ。

そうだ、いっそ人目なんて気にしないで手をつないだまま街を歩いてみようかな、なんて。












「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -