a witness


(しえみ視点)


「ほんとに仲良しだなあ、いいなあ」

そう小さく呟いてみたら、なんだか寂しくなってしまった。
教室の端っこで燐と勝呂がなにやら言い合っているその光景が私には羨ましく映る。
きっと私がだめなんだ、頑張ってみんなと仲良くならなくちゃ。燐にも迷惑かけちゃう。さっきからそんな考えの堂々巡り。

「よしっ話しかけに行こう!」

そう決心して教室の端まで走って行くと、さっきよりも言い争いはひどくなっていた。
「いっぺんでええ言うてんねん!」
「だあーかーら!無理だってんだよ!!」
「なんでやねん!」
「はっ…ハズカシーだろ!」
「俺かて恥ずかしかったわ!」
「あーもうお前どっかいけっ!」
「なんやてこら!?」

「なにが恥ずかしいの?」

燐も勝呂くんも顔を真っ赤にして言い合っているものだから、思わず口に出してしまった。
あわあわと慌てだしたふたりに笑ってしまいそうになって、きゅっと口を結ぶ。

結局はぐらかされて次の体育の準備へと行ってしまったが、なにが恥ずかしいのか気になる。
教えてくれないかなあ


先生の話を聞いている時、燐を盗み見てみると、まだ少し顔が赤いようだった。

なんだかそんな燐を可愛いと思ってじーっと見つめてみても気づかない。たぶん、燐はずっと勝呂くん達を見てたから。
そんなにあっちがいいのかな、ああまた迷惑かけちゃってるのかなあ。
どんどん思考がマイナスになっていく。
でも、頑張らなくちゃ。
出雲ちゃんと2人組を作ってもらおうと思い立った。燐は勝呂くん達と組んでねと言って出雲ちゃんのへ走る。
その方が燐は楽しいはずだから。

「出雲ちゃん!」
「はあ?なによ何しにきたの」
「え…えっとね、私と2人組になってもらえないかなっ」
「ふん、なんであんたなんかと組まなきゃならないのよ」
「で、でも女の子は2人だけだし…」
「…!まあ、じゃあなってあげてもいいわよ」
「ほんと!?ありがと出雲ちゃん!」
「勘違いしないでよね。しょうがないから組んであげるだけなんだから」

なんとか2人組をつくれてほっと安心した。
でもすごく緊張するなあ、と思う。
どんなお話をすればいいんだろうと考えて、ふと思い出したことを聞いてみることにした。

「あ、あのね出雲ちゃん。燐と勝呂くんって仲良しだよねえ」
「…あんなの仲良しってもんじゃないでしょ」
「え?どういうこと?」
「あんたどれだけ鈍感よ…」
仲良しってもんじゃない。
どういう意味なんだろう?
私が思ってるよりもっと仲良しなのかな?
体育が終わり、さっき出雲ちゃんの言っていたことを思い出す。
わかんないなあ。
うんうんと唸りながら廊下を歩いていると、ちょうど今頭にあったふたりが窓際で立ち話をしていた。
とっさに近くにあった柱に隠れてしまい出るタイミングをはかって様子を伺っていると、ふと勝呂くんが微笑んだ。
今までみたことの無いような笑顔にドキっとしてしまう。
幸せそうに微笑む勝呂くんと、真っ赤になっている燐。
いったいなにがあったんだろう?
ちょっと気になるなあ
今日は気になることが多いなあ。でもそれより、いまだに出て行くタイミングがつかめない。





そして、見てしまった。
忘れ物を取りに帰った放課後、教卓の前で。
手をつないでじゃれあい、しっかり指と指を絡めたいわゆる恋人つなぎで見つめ合って、そのままゆっくりと目を閉じるふたり。
あまりに急な出来事で、目が離せなくなってしまった。

仲良しってもんじゃない

ああそっか、そういう意味かあ。
顔が火照って熱くってはじめは動揺しかなかった。
でも、点と点が結ばれるみたいに迷いなく今日の出来事に納得できた。
腑に落ちるってこんな感じをいうのかな。
とりあえず、忘れ物はもう明日でいいや。

まだ熱を持つほっぺたを冷ますために手であおぎながら、廊下を歩き始める。

明日、ふたりに会ったらちょって照れてしまうかもしれないなあ







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